ゴート (2016年の映画)

『ゴート』(原題:Goat)は、2016年に公開されたアンドリュー・ニール監督によるアメリカ合衆国のドラマ映画です。主演はベン・シュネッツァーが務め、ブラッド・ランドの自叙伝『Goat: A memoir』(2004年発表)を原作としています。日本での劇場公開はありませんでしたが、スターチャンネルで放送されました。

物語の中心人物は、集団暴行事件からの回復を経て大学に進学した19歳のブラッド・ランドです。兄ブレットの誘いで、名門学生クラブであるファイ・シグマ・ミューへの入会を決意します。入会を期待するブラッドでしたが、待ち受けていたのは想像をはるかに超える過酷な入会儀式でした。

入会儀式は、「少年を真の男にする」という名目で、先輩部員による新入会員への精神的、肉体的暴力の場でした。森の中でビールの大瓶を一気飲みさせられるなど、理不尽な行為が繰り返されます。失敗すればヤギとの性交を強要されるという脅迫もありました。恐怖に震えながら儀式を終えたブラッドでしたが、その後の兄との対立や、先輩部員からの継続的な暴力に苦しむことになります。

さらに、新入会員のウィルが運動中に心臓発作で死亡する事件が発生します。ウィルの遺体には複数の打撲傷が見つかり、大学はファイ・シグマ・ミューの調査に乗り出します。しかし、同クラブは暴行の事実を隠蔽しようとします。その結果、内部告発により活動停止処分を受けます。ファイ・シグマ・ミューのメンバーは、ブラッドを密告者と疑い、彼の男子寮の部屋にヤギの糞を撒き散らすなど、報復行為に出ます。

その後、ブラッドはメンバーに糾弾されますが、密告者は彼ではなく、予想外の人物であったことが明らかになります。映画は、入会儀式という過酷な体験を通して、ブラッドの葛藤、友情、裏切り、そして大学における隠された暴力の現実を克明に描いています。

キャストは、ベン・シュネッツァーがブラッド・ランド役、ニック・ジョナスが兄ブレット・ランド役を演じるなど、豪華な顔ぶれです。他の主要キャストには、ダニエル・フラハティ、ガス・ハルパー、ヴァージニア・ガードナー、ジェームズ・フランコなどが名を連ねています。

映画の製作は2014年10月にアンドリュー・ニール監督の起用から始まり、2015年5月にはオハイオ州で主要撮影が行われました。2015年12月には劇中写真が公開され、2016年1月にはサンダンス映画祭でプレミア上映されました。その後、パラマウント・ホームビデオが全世界配給権を獲得し、ベルリン国際映画祭でも上映されました。

批評家の評価は高く、Rotten Tomatoesでは79%の支持率、平均点6.53点と高評価を得ています。Metacriticでも加重平均値64/100と、一定の評価を受けています。批評家の見解は、作品の過酷さにもかかわらず、その題材の深さ、俳優陣の演技力、緊張感あふれる展開が高く評価されています。本作は、大学におけるハラスメント問題や、集団心理の闇を鋭くえぐり出す衝撃的な作品として、多くの観客に問いかけるものです。

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