ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇

『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』は、小林よしのり氏が2012年から2014年にかけて発表した漫画に、描き下ろしを加えて構成された作品です。この作品は、日本とアジア諸国との関わりを、歴史の原点から見つめ直すことを主題としています。

物語の背景と主要人物

本作では、幕末から明治、そして大東亜戦争に至るまでの激動の時代に活躍した、歴史に埋もれた人々に光を当てています。特に中心人物として描かれるのが、頭山満です。頭山は、西洋の帝国主義からアジアを開放しようという独立自存の精神を強く持ち、その思想は当時の社会状況を読み解く上で非常に重要な要素となっています。また、頭山の思想には、西郷隆盛の影響が大きいとされています。

頭山満の思想

頭山満は、西洋の植民地支配から脱却するためには、アジアが連帯しなければならないと考えていました。そして、日本はその中心的な役割を果たすべきだという信念を持っていました。この思想が、後の「大東亜共栄圏」構想に繋がっていきます。頭山の国家観としては、政府は国民の福利厚生を疎かにしてはならず、人々が偏った考えに陥ると国家が傾いてしまうという考えを持っていました。

不平等条約の改正

ペリーの来航によって、日本は日米和親条約、さらに日米修好通商条約という不平等な条約を締結させられました。これらの条約を改正することは、明治政府にとって急務でした。しかし、政府は欧米に対して弱腰であり、積極的に日本を欧米化しようとしていました。その象徴が鹿鳴館です。政府のこのような姿勢に対し、国民は不満を募らせ、頭山満らの間で条約改正を阻止するための議論が活発化しました。最終的に、来島恒喜が大隈重信に爆弾を投擲する事件が起こり、その結果として条約改正は阻止されました。この事件に対し、頭山は来島を称賛しました。

自由民権運動

明治維新後、薩摩藩・長州藩出身者が新政府の要職を占め、藩閥政治が形成されました。これに対抗するために始まったのが、自由民権運動です。頭山満が中心となった玄洋社も、自由民権結社として誕生しました。自由民権運動の根本には、国権を確立して西洋に対抗するという目的がありました。そのためには、民権を確立して広く国民の意見を聞くことが必要であるという考えがありました。しかし、内紛や政府の弾圧により、運動は次第に政府に吸収されていきました。

朝鮮との関係

清を宗主国としていた朝鮮は、明治9年に開国しました。しかし、国内には旧来の伝統に固執する人々も多く存在していました。その一方で、近代国家建設を目指すグループもあり、その代表が金玉均です。金は、日本政府に支援を要請しましたが、清との全面衝突を恐れた政府は消極的でした。これに対し、玄洋社は一貫して金玉均を支援しました。頭山満は、金自身の才能を見抜き、西洋に対抗するためには朝鮮の独立が不可欠だと考えていたからです。

日本の性文化

本作では、吉原における頭山満の様子や、遊女たちの過去や時代背景、そして日本人の性に対する意識についても触れられています。これらの日本の性文化は、西洋人には理解されにくく、それが慰安婦問題にも繋がっていると指摘しています。

現代社会への批判

本作では、当時の社会情勢と現代社会を比較し、批判を加えている箇所があります。頭山満らは、欧米諸国の外圧に対抗するためには、日本が自立しアジア諸国を導かなければならないと考えていました。しかし、現代では日米同盟に依存し、中国や韓国に対して強硬姿勢を示す言説が盛んです。これは頭山らの思想とは正反対であると批判しています。また、インターネット上で見られる排外主義的な言論や差別的な行動も批判し、自主独立の精神を持つことの重要性を強調しています。

シリーズ作品と連載打ち切り

本作はシリーズとして展開され、2015年には第2巻「愛国志士、決起ス」、2017年には第3巻「明治日本を作った男達」、2019年には第4巻「朝鮮半島動乱す!」が発売されました。しかし、連載していた『SAPIO』が不定期誌になったことで、シリーズは打ち切りとなりました。

『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』は、歴史上の人物の思想を通して、現代社会を深く考察する作品です。自主独立の精神の重要性を説き、読者に新たな視点を提供してくれるでしょう。

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