ゴールド・ステート・コーチ

ゴールド・ステート・コーチ

ゴールド・ステート・コーチはイギリス王室にとって重要な馬車であり、主に君主の戴冠式に使用されています。この馬車は、1760年にジョージ3世によって委託され、ロンドンで7562ポンドという当時の巨額の費用で製作されました。完成は1762年であり、今もバッキンガム宮殿のロイヤル・ミューズに保管されています。

特徴

この馬車の重さは約4トン、長さは約7.3メートル、高さは3.7メートルです。外観は金色で、側面にはジョヴァンニ・バッティスタ・チプリアーニの描いた美しい絵が施されています。また、屋根にはイングランド、アイルランド、スコットランドを表す3体の知恵を象徴する像や、イギリス帝国を体現するための4体のトリートーン像が配置されています。

馬車の胴体はモロッコ革で覆われ、金色の装飾が施された筋交いにより吊られています。内装は高級なベルベットとサテンで仕上げられ、彫刻家のジョセフ・ウィルトン卿による精細な彫刻が目を引きます。屋根の上にある智天使たちは、大英帝国の王冠を持ち、騎士のシンボルや王笏を手にしています。それに囲まれるように配置された金色のヤシの木の枝や、ライオンの頭から立ち上がる彫刻があり、これらは全て英国の軍事的成功を象徴するものです。

前輪にはトリートーンが描かれ、その姿勢は馬車を引っ張るようにも見えます。トランペットのような法螺貝を吹き鳴らしており、海の支配者の到来を知らせる役割を果たしています。一方、後ろのトリートーンには英国海事の伝統を強調するための帝国のシンボルが描かれています。

使用の歴史

ゴールド・ステート・コーチは、歴代の英国君主が戴冠式の際に使う馬車として知られていますが、その乗り心地についての評価はあまり良くはありません。元海軍士官のウィリアム4世は、馬車に乗ることを「荒れた海で揺れる船に乗っているようなもの」と形容しました。また、ヴィクトリア女王は、その乗り心地に不満を持ち、できるだけ使用を避けたと伝えられています。ジョージ6世もその道のりを「非常に不快である」と述べており、エリザベス2世もまた彼女の戴冠式の道のりについて「恐ろしい」と表現しました。これらの意見は、過去のシルバー・ジュビリーやゴールデン・ジュビリーで使用されたにもかかわらず、彼女のダイヤモンド・ジュビリーでは馬車が使用されなかった理由として考えられています。

戦後、ジョージ6世は乗り心地を改善するために馬車のオーバーホールを行い、鉄製車輪にゴムを施しました。この工夫により、多少なりとも快適さが増したとされています。

結論

ゴールド・ステート・コーチは、その美しさと歴史的な重要性から、英国王室にとって特別な地位を持ち続けています。その外見や装飾、そして使用される際の歴史的背景は、英国の王室の伝統を感じさせる、象徴的な馬車として、今も語り継がれています。

もう一度検索