智天使

智天使（ちてんし）

智天使、またの名をケルビム（ヘブライ語: כּרוּב、複数形: כּרוּבִים）は、天使の一種として知られ、主に旧約聖書に登場します。彼らは天使の階級の中で第二位に位置づけられ、その美しさや神秘的な存在感から多くの文化や宗教に影響を与えてきました。日本のキリスト教においては「ケルビム」との表記が一般的ですが、日本ハリストス正教会では「ヘルヴィム」と呼ばれています。この名称の違いは、ギリシャ語の発音の変化に由来しています。

語源と発音の変遷

智天使の名称は、ギリシャ語の「Χερουβείμ」（ケルビーム）から転写されており、古典音では「ケルーベイム」、中世以降は「ヘルヴィム」と発音されます。この二つの発音は、西方教会と正教会でそれぞれ受け継がれ、時代の影響を受けた結果として、日本の様々な教派における片仮名表記に違いが見られます。

聖書における役割

旧約聖書の創世記第3章では、神がアダムとエバをエデンの園から追放し、罪から守るためにケルビムを配したとされています。このケルビムは、命の木への道を守るために、回転する炎の剣と共に配置され、彼らの存在が神の威厳や守護を象徴しています。また、契約の箱の上にはケルビムの形を模した金細工が置かれ、神の臨在を示すものとされています。

エゼキエル書では、ケルビムが「四つの顔と四つの翼」を持ち、その翼の下には人の手のようなものが描写されています。これにより、彼らは知恵や神の意志を具現化する存在として解釈されます。ルネッサンス期の作品では、ケルビムはしばしば愛らしい赤子の姿、つまり「プット（Putto）」として表現され、見る者に親しみを持たせるような形で描かれています。

神の玉座としての位置づけ

聖書には、ケルビムが神の玉座や神の乗物としても言及されています。例えば、サムエル記下第22章では「彼はケルブに乗って飛び」といった記述があり、詩篇99編には「主はケルビムの上に座せられる」という言葉があります。これらの記述は、ケルビムが神の力、権威、知恵を象徴する役割を果たしていることを示しており、重要な存在であることが強調されています。

起源と世界的な影響

ケルビムの起源は、アッシリアの伝説的な生物「クリーブ」に由来すると言われています。この生物は有翼の人面獣身を持つ守護者であり、その影響を受けた形でケルビムが作り出されたと考えられています。また、エゼキエル書第1章にはケルビムの姿についての記述があり、多くの目が知恵の象徴だとされています。このような特徴が、神を象徴するケルビムの画像や彫刻においても見られます。

絵画表現においては、時折ケルビムはセラフィムと混同されて描かれることもありますが、それぞれ別の役割を持つ天使であることを理解しておくことが重要です。

関連する項目

• - 天使の一覧
• - ヘルヴィムの歌
• - リピタ
• - ベートーヴェンの交響曲第9番

智天使はその神秘的な存在によって、聖書の中で常に重要視されています。彼らの姿や役割は、聖なるものと人間の関係を象徴し、深い考察を促しています。

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