ゴー・モーション

ゴー・モーションとは

ゴー・モーションは、ストップモーションアニメーションの一種で、インダストリアル・ライト&マジック社のフィル・ティペットによって開発された技術です。ストップモーションアニメでは、静止したミニチュアモデルを1コマずつ撮影するため、動きがカクカクして不自然に見える欠点がありました。ゴー・モーションは、この欠点を克服するために、動いているミニチュアモデルを撮影することで、より自然な動きを表現します。

ストップモーションとの違い

ストップモーションアニメーションでは、ミニチュアモデルを少しずつ動かしながら、1コマずつ静止した状態で撮影を行います。そのため、各コマの間には動きの情報がなく、映像を連続して再生するとカクカクした不自然な動きに見えてしまいます。一方、ゴー・モーションでは、ミニチュアモデルに操演用の棒を取り付け、モーターとコンピュータによって制御し、動いている状態を撮影します。これにより、映像に自然な「モーションブラー（動きのブレ）」が生まれ、滑らかでリアルな動きを表現することが可能になります。

技術の仕組み

ゴー・モーションでは、ミニチュアモデルに細い棒を取り付け、その棒をモーターで動かします。このモーターの動きはコンピュータで制御され、カメラのシャッターが開いている間にミニチュアモデルが動くように調整します。これにより、撮影された映像には自然なモーションブラーが含まれ、より滑らかな動きを表現できます。

ゴー・モーションの歴史

ゴー・モーションのアイデアは、1970年の映画『恐竜時代』でストップモーションアニメーターのジム・ダンフォースが、ストップモーションの撮影時にミニチュアモデルを意図的に揺らしたり、多重露光を使用することで、疑似的なブレを表現したことに端を発します。その後、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲|スター・ウォーズ エピソード5_帝国の逆襲』でフィル・ティペットが同様の技術を試み、モーターを使ってミニチュアモデルに人工的なブレを与え、自然な動きに見せることに成功しました。

しかし、『帝国の逆襲』で用いられた技術はまだ未完成であり、ミニチュアモデルが横に移動する場合にしか効果を発揮しませんでした。その技術を洗練し確立したのが、1981年の映画『ドラゴンスレイヤー』で初めて使用された「ゴー・モーション」です。『ドラゴンスレイヤー』では、1秒間に48コマの高速度撮影を行い、被写体の巨大感を表現しました。

ゴー・モーションは、『E.T.』など1980年代の映画で多用されましたが、撮影に時間がかかることや、操演用の棒を隠すためにマットを作成する必要があるなど、手間がかかる技術でもありました。また、1980年代後半になるとコンピュータグラフィックス（CG）の技術が急速に発展し、ゴー・モーションの需要は徐々に減少しました。

1993年の映画『ジュラシック・パーク』では、恐竜のシーンの撮影に当初ゴー・モーションが検討されましたが、最終的にはCGが使用されました。CGによる「小型恐竜の群れを追いかけるティラノサウルス」のテストショットを見たスティーヴン・スピルバーグ監督は、その滑らかな動きに感銘を受け、「プロセスとしてのストップモーションは絶滅した」と感じたと言われています。

コンピュータグラフィックスの台頭

コンピュータグラフィックスの発展により、ゴー・モーションのような特殊効果技術は次第にその役割を終えていきました。CGは、より複雑な動きをより効率的に表現できるようになり、映画制作の現場ではCGが主流となりました。

ゴー・モーションが使用された作品例

『ドラゴンスレイヤー』 - 翼竜ヴァーミスラックス・ペジョラティヴ
『E.T.』 - 少年たちがE.T.を乗せた自転車で飛行するシーン（後にCGでリメイク）
『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀|ハワード・ザ・ダック_暗黒魔王の陰謀』 - 怪物ダーク・オーバーロード
『ウィロー』 - 双頭のクリーチャー
* 『エイリアン3』 - ゼノモーフ（ドッグエイリアン）

まとめ

ゴー・モーションは、ストップモーションアニメーションの表現力を大きく向上させた画期的な技術でした。しかし、CG技術の発展によってその役割を終え、現在はほとんど使用されていません。それでも、ゴー・モーションが生み出した独特の質感や動きは、今でも多くの人々に愛されています。

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