モーションブラー

モーションブラーとは

モーションブラーとは、写真や映像において、動いている被写体を撮影した際に生じる、意図しないブレのことです。被写体ぶれとも呼ばれます。カメラのシャッターが開いている間に被写体が動くことで、その動きが残像として記録されます。

写真におけるモーションブラー

写真の世界では、長年にわたり、いかにモーションブラーを抑え、クリアな画像を得るかが技術的な課題でした。そのため、露光時間を短くする（シャッター速度を速くする）必要があり、シャッター機構の改良やフィルムの高感度化、ストロボ装置の開発が進められました。近年では、デジタルカメラに手ぶれ補正機構が搭載され、比較的遅いシャッター速度でも手ぶれを抑えられるようになりました。しかし、この技術はあくまで手ぶれを防止するものであり、被写体ぶれを防ぐことはできません。

一方、モーションブラーは、動きを表現するための効果としても活用されます。意図的に長時間露光を行うことで、被写体の動きを強調したり、光の軌跡を捉えたりすることができます。例えば、ネオン管の照明を強調した写真のように、あえてモーションブラー効果を発生させる撮影方法も確立されています。

映画撮影におけるモーションブラー

映画撮影では、古くからストップモーション・アニメーション（コマ撮り）という手法が用いられてきました。この手法は、1コマごとに撮影した静止画を繋げて動きを表現するものですが、通常の動画と比べると、カクカクとしたぎこちなさを感じることがあります。これは、実際に動いている物体を撮影した場合に必ず生じるはずの「ブレ」がないため、人間の目が違和感を覚えてしまうからです。

そのため、撮影した画像にモーションブラーを加え、より自然な動きに見せる方法が模索されてきました。特撮制作会社のインダストリアル・ライト&マジックは、映画『スター・ウォーズエピソード5/帝国の逆襲|スター・ウォーズエピソード5_帝国の逆襲』で、低速度撮影とモーション・コントロール・カメラを併用することで、宇宙船のスピード感を表現することに成功しました。

この手法を応用・発展させたのが、映画『ドラゴンスレイヤー』で初めて試みられたゴー・モーションです。これは、コンピュータ制御の可動支柱を使用し、人形を動かしながら低速度撮影することでブレを生じさせる技術です。これにより、ストップモーションアニメに画期的なリアリティをもたらしましたが、支柱を消す手間がかかるため、広く普及するには至りませんでした。

その後、CG技術の進歩により、モーションブラーの表現はより高度になりました。映画『ジュラシック・パーク』では、当初はストップモーションアニメにCGのモーフィング技術を応用してモーションブラーを追加する方法が検討されましたが、最終的にはフルCGの恐竜が登場することになりました。今日のCGアニメーションにおいても、モーションブラーの再現は非常に重要であり、多くの制作ソフトウェアに効率よくブラーを生成する機能が搭載されています。

モーションブラー現象

意図せずにモーションブラーが発生すると、カメラの前を高速で飛び回る昆虫の残像が、棒状の生物のように映ることがあります。これにより、スカイフィッシュのような未確認生物と誤認されることもあります。

モーションブラーは、映像表現における重要な要素であり、意図的に利用することで、動きやスピード感、あるいは幻想的な効果を演出することができます。一方で、意図しないモーションブラーは、画質を劣化させ、不自然な印象を与えることもあります。そのため、撮影条件や被写体の動きに合わせて、適切にモーションブラーをコントロールすることが重要です。

モーションブラー