サイイド・サイード

サイイド・サイードとオマーンの歴史的実績

概要

サイイド・サイード（1791年 - 1856年）は、オマーンブーサイード朝の第5代スルターンとして重要な役割を果たしました。彼の治世はオマーンの全盛期とされ、彼は「サイード大王」とも称されています。サイードはオマーンの影響を広げ、特に東アフリカでの覚醒に努め、オマーン海上帝国として広大な交易網を築き上げました。

東アフリカへの進出

サイードがスルターンとして即位した頃、オマーン本土の経済は徐々に衰退しつつありました。18世紀末から19世紀になるにつれて、エジプトの政情が安定したことで、ペルシア湾を通じた交易が再び活発化しました。このため、オマーンの首都マスカットでの交易繁盛の時代は終わりを迎えつつありました。オマーンは、かつてポルトガルからの独立を果たした17世紀以来、東アフリカに影響を持っていましたが、本土の混乱により、各地のオマーン人豪族は次々と独立する事態となりました。その結果、サイードの即位時にはザンジバルのみがオマーンの支配下に残存していました。

1828年、サイードは自ら旗艦リバプール号を指揮し、モンバサ沿岸の都市に対して攻撃を仕掛けました。モンバサでは、ヤアーリバ朝から授けられた総督の地位にあるマズルイ家がオマーンの支配を拒否し、サイードとの間に戦争が勃発しました。この戦争は1837年に至るまで続き、サイードはソマリアからモザンビークとの国境にかけて、東アフリカの沿岸地域をオマーン領として組み入れることに成功しました。その結果、スワヒリ諸都市間での初めての、緩やかな統合状態が実現しました。

ザンジバルへの遷都

1840年には、サイードはザンジバルのストーン・タウンに新たな首都を築きました。当時のザンジバルは奴隷貿易の中心地として名を馳せ、インド洋貿易の要所となっていました。サイードはザンジバルにおいて特産品であるチョウジの栽培を導入し、これが経済成長を促進する要因となりました。オマーンは大型の帆船団を保有し、欧米諸国との貿易を進めるとともに、正式な外交関係も築きました。これによりザンジバルには多くの領事館が設立され、オマーンはインド洋の二大海洋帝国の一角を成すに至りました。

死後の影響

サイイド・サイードは1856年に亡くなりましたが、その後、後継者争いが生じ、オマーンは国内外の情勢に急激に変化し、国土はオマーンとザンジバルの二つに分かれました。彼の治世がもたらした影響は、オマーンのみならず、東アフリカ全体に深く刻まれることとなりました。サイードの時代に築かれた交易路と国家の枠組みは、後の歴史にも大きな影響を与えています。

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