サイトカイニン

サイトカイニン (Cytokinin) の紹介

サイトカイニンとは、植物において細胞分裂やシュート形成を促す役割を持つホルモンの一種です。このホルモンはオーキシンと呼ばれる別の植物ホルモンと相互作用しながら働きます。略称は CK であり、植物の成長に欠かせない存在となっています。

発見の歴史

サイトカイニンの発見は、1913年にさかのぼります。この年、ハーバーランドがジャガイモの師管から抽出した液体に細胞分裂を誘導する成分が含まれていることを発見しました。その後、1940年代後半から1950年代前半にかけて、スクーグらによりココナッツミルクや酵母抽出液が細胞分裂を促進することが示されました。特に、ミラーは古いDNAから高い活性を持つ物質を単離し、その名をカイネチンと命名しました。1964年には、ゼアチンという天然サイトカイニンがトウモロコシから単離され、1965年にはオーキシンの存在下で細胞分裂を促進する物質が「サイトカイニン」と総称されることが提案されました。

合成と分布

21世紀に入ってから、サイトカイニンの合成や応答に関する研究が活発化しました。現時点でも、その詳細なメカニズムは解明されていない部分が多く存在します。サイトカイニンの生合成経路には二つの主要な説があります。一つは、tRNAのアデニン残基がイソペンテニル化され、その分解産物がサイトカイニンになるという説です。しかし、この経路は主要なものではないと考えられています。もう一つは、AMPがイソペンテニル化された後、リン酸やリボースが脱離する経路です。最近の研究によると、植物におけるイソペンテニル化の基質はATPまたはADPとされており、主に根で合成され、道管を通じて上部に輸送されます。

サイトカイニンの効果

サイトカイニンは、植物の成長に多くの役割を果たします。以下に主要な作用を挙げます。

• - 細胞分裂の促進: 細胞分裂が正常に進むためにはオーキシンとサイトカイニンの両方が必要です。これにより、細胞が培養された際にカルスを形成します。
• - シュートの形成: オーキシンとサイトカイニンの共存下でカルスを培養することで、新しいシュートが形成されます。
• - 側芽の成長促進: 頂芽の抑制を解除し、側芽の成長を促進します。
• - 老化抑制: サイトカイニンが存在すると、葉の老化が遅れることが知られています。
• - シンク化作用: 栄養分の輸送において、サイトカイニンを塗布するとシンクの性質が高まります。

農業への利用

農業において、サイトカイニンはさまざまな目的で利用されています。イチゴやランの組織培養では優良株の生成に使用され、またワタの収穫前に使用されることもあります。果樹においては、枝の数を増やしたり、着果促進などの目的で用いることが多いです。天然のサイトカイニンであるゼアチンは価格が高いため、合成物質であるベンジルアデニンやチジアズロンが広く利用されています。

その他の情報

動物にもサイトカイニンとは異なる機能を持つサイトカインという物質がありますが、全く異なる性質の物質です。植物ホルモンにおいて、サイトカイニンは重要な役割を果たしており、今後も研究が進むことで新たな発見が期待されています。

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