サイモン・フォアマン

サイモン・フォアマン（1552年12月30日 - 1611年9月15日）は、エリザベス1世時代のイングランドで名を馳せた神秘学者、そして占星術師でした。しかし、彼が後世に名を残す主な理由は、彼自身の著作である『観劇記』（"Bocke of Plaies"）にあります。

この『観劇記』には、フォアマンが晩年の1610年から1611年にかけてロンドンで観劇した4つの演劇についての記録が含まれており、それらの演劇のあらすじが詳細に記されています。特に重要なのは、そのうち3つの演劇が、ウィリアム・シェイクスピアの作品の上演記録として信頼性が高いとされている点です。

具体的には以下の3作品が挙げられます。

『マクベス』：1610年4月20日、グローブ座にて観劇。
『冬物語』：1611年5月15日、グローブ座にて観劇。
* 『シンベリン』：劇場名、観劇年月日の記載はなし。

これらの記録は、シェイクスピアの作品が当時どのように上演されていたのかを知る上で、非常に貴重な情報を提供しています。しかしながら、フォアマンが観劇したとされるもう一つの作品、『リチャード二世』については、大きな謎が残されています。

フォアマンの記録によれば、『リチャード二世』は1611年4月30日にグローブ座で観劇されたとされていますが、彼が書き残した劇の内容は、シェイクスピアの同名の作品とは明らかに異なるのです。さらに、この時期にシェイクスピアの作品とは異なる『リチャード二世』という題名の作品が存在したという記録も一切ありません。この矛盾は、研究者たちの間で長年にわたり議論の対象となっており、フォアマンの記録の信憑性や、当時の演劇状況に関する理解を深める上での重要な課題となっています。

また、『観劇記』には他にもいくつか疑問点が指摘されており、様々な研究者によって、フォアマンが記録した内容の解釈や、矛盾点の説明が試みられてきましたが、未だに定説に至っていません。このため、『観劇記』は多くの謎を含んだ書物として、今もなお研究され続けています。

フォアマンの『観劇記』は、単なる観劇記録としてだけでなく、当時の演劇文化、そしてシェイクスピア研究においても非常に重要な資料です。その謎めいた記述は、私たちに当時の演劇の多様性や、歴史の解釈の難しさを教えてくれます。

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