サイ・トゥオンブリー

サイ・トゥオンブリー（Cy Twombly、1928年4月25日 - 2011年7月5日）は、アメリカ合衆国バージニア州出身の画家、彫刻家です。彼の作品は、時代によって大きく変化していますが、特に有名なのは、無彩色または彩度の低い背景に、筆記体の「e」や「l」の字を連続して書いたような、カリグラフィー的な作風です。1980年代以降は、植物をモチーフにし、色彩を多用した作品を制作していました。

代表作としては、黒板のようなダークグレーの画面に、クレヨンで落書きのように描かれた「Untitled」（1970）シリーズが挙げられます。この作品は、彼の独特なスタイルを象徴するものであり、多くの人々に印象を与えました。

日本では、国立国際美術館（大阪府大阪市北区）やベネッセハウス（香川県直島町）などが彼の作品を所蔵しています。また、1996年には、絵画部門で高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しており、国際的にも高い評価を受けていることがわかります。

来歴

1928年、トゥオンブリーはヴァージニア州レキシントンに生まれました。ボストン美術館付属美術学校と、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグ・オブ・[[ニューヨーク]]（美術学生連合）で美術を学びました。1951年には、ロバート・ラウシェンバーグのすすめでブラック・マウンテン・カレッジに進み、ロバート・マザウェルに師事しました。同年、ニューヨークのThe Kootz Galleryで最初の個展を開催しています。1952年には、ラウシェンバーグとともに南ヨーロッパや北アフリカを旅行し、様々な文化に触れました。

1953年には、暗号制作者としてアメリカ陸軍に従軍しました。この経験は、彼のその後の作品に影響を与えたとされています。特に、文字や記号を抽象的に表現するスタイルは、この時期の経験から生まれたのかもしれません。

1957年からはローマに定住し、イタリアで作品を制作するようになりました。これは、ローマの名門フランケッティ家の兄妹との出会いがきっかけでした。美術のパトロンであった兄のジョルジオの後援でミラノで成功を収め、1959年には、肖像画家として活躍していた妹のタチアナと結婚しました。

2011年7月5日、トゥオンブリーはローマで亡くなりました。83歳でした。

没後も、彼の作品は世界中で展示され、高い評価を受け続けています。2015年5月には、東京・品川の原美術館で『サイ トゥオンブリー：紙の作品、50年の軌跡』展が開催され、約70作品が展示されました。また、同年11月には、米ニューヨークのサザビーズ主催のオークションで、彼の作品が7053万ドル（約87億円）という高額で落札されました。このことは、彼の作品がいかに世界中で求められているかを物語っています。

さらに、2016年4月には、DIC川村記念美術館にて、サイ・トゥオンブリーの写真－変奏のリリシズム－が開催され、絵画3点、彫刻4点、ドローイング4点、版画18点が展示されました。これらの展示は、彼の多岐にわたる才能と作品の魅力を伝えるものでした。

サイ・トゥオンブリーの作品は、抽象的な表現の中に、文字や記号、植物といった様々なモチーフを取り込み、独自の美学を追求したものです。彼の作品は、見る者に深い思索を促し、芸術の新たな可能性を示唆しています。

彼の画業は、絵画、彫刻、ドローイング、版画と多岐に渡り、その幅広い活動は後世のアーティストたちに大きな影響を与え続けています。トゥオンブリーの芸術に対する情熱と創造性は、今後も長く語り継がれるでしょう。

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