サウジアラビアにおける女性の人権

サウジアラビアにおける女性の人権

サウジアラビアにおける女性の人権は、イスラム教の厳格な解釈に基づく社会規範と法制度によって、長らく厳しい制限を受けてきました。しかし、近年では女性の社会進出を促す動きが活発化しており、様々な分野で変化が見られます。

人権

サウジアラビアは、イスラム教ハンバル学派のシャリーアを国法としており、一夫多妻制が認められています。1978年に女子差別撤廃条約を批准しましたが、「シャリーアに反しない限り」という留保をつけています。この留保付き批准に対し、国際連合人権理事会は条約が遵守されているとの見解を示しています。1990年の湾岸危機を契機に、国内で女性の権利拡大を求める声が高まり、アラブの春の影響も受け、女性の権利は徐々に拡大しています。2013年には、諮問評議会に30名の女性議員が初めて任命されました。

就労

1950年代以前は、女性の就労は比較的認められていましたが、油田開発が活発化するにつれて制限が強化されました。現在でも、高齢世代には女性教師から教育を受けた男性が多く存在します。一方で、外国人女性労働者が多く、メイドやサービス業に従事しています。2002年以降、労働者の自国民化政策が進められ、家事労働やサービス業への女性就労も法的に認められるようになりました。

自動車の運転

サウジアラビアでは、2018年まで女性の自動車運転が法律で禁止されていました。元々は社会通念上の慣習でしたが、1990年代以降、都市部で運転する女性が増加したため、禁止法が制定されました。女性団体による抗議運動の結果、2017年9月にサルマン国王が女性の運転を認める法改正を決定、2018年6月には女性に運転免許が発行され、運転が許可されました。2018年10月には、リーマ・ジュファリが女性初のプロレーサーとして誕生しました。

教育

初期の女子大学では、男性教員と直接会うことが禁じられていたため、ビデオ講義や、親族男性を通じた文通で教師とやり取りする方式が取られていました。現在では、この時代を乗り越えた女性が教員となり、教育機会が増加しています。また、男性教員による授業を行うために、ヒヤル（脱法行為）が用いられることもありました。奴隷であれば女性と会話しても良いという抜け穴を利用し、外国人大学教授を奴隷身分で雇用して講義させるという方法も取られました。

海外留学・夫婦別居

海外留学者の約4分の1が女性ですが、ほとんどが既婚者です。夫婦別居が原則として認められていないため、夫婦同時留学となることが多いです。また、未婚女性の海外留学は、親の海外赴任などの特別な理由がある場合に限られていました。しかし、2019年8月に「男性後見人」による承認制度が撤廃され、女性が自由に海外渡航できるようになりました。

娯楽

長らく女性がサッカースタジアムで試合を観戦することは認められていませんでしたが、2018年1月より、一部の会場に家族連れ専用席が設けられ、女性の観戦が可能になりました。ただし、限定条件付きです。

関連項目

イスラームと女性
イランにおける女性の人権
サウジアラビアにおける死刑
サウジアラビアにおける信教の自由
アフガニスタン女性革命協会
カティフの強姦事件
* サウジアラビアの法制

脚注

参考文献を参照してください。

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