イランにおける女性の人権

イランにおける女性の人権問題は、歴史的に様々な変遷を経てきました。1906年のイラン立憲革命以降、近代化が進み改善が見られた時期もありましたが、1979年のイラン革命以降、イスラム原理主義の影響下で女性の権利は一般に劣悪であるとされています。20世紀末から21世紀初頭にかけては、他の先進国と比較して女性の人権が厳しく制限されており、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では低い順位に位置づけられています。一方で、金融口座の利用や教育機会など、他の地域に比べて比較的進んでいる側面も指摘されています。

歴史的経緯

アケメネス朝

古代ギリシャの記録によると、アケメネス朝時代には女性の市民政治への参加が認められていましたが、その範囲は限定的で例外的でした。歴史家ヘロドトスは、ペルシャでは男女が共に国を統治し、公共行事にも参加していたと述べています。

ガージャール朝からイラン革命

ガージャール朝時代からイラン革命初期にかけて、ペルシャの女性は相続や初等教育などの権利が制限された第二階級市民とみなされていました。部族社会では一夫多妻制や一時的な婚姻制度が認められることもありました。1906年から1911年のイラン立憲革命は、西洋的文明と立憲政治を導入し近代化を促し、その中で女性愛国協会が結成され、女性の権利擁護運動が展開されました。レザー・ハーンによる権力掌握後、女性の権利を追求する雑誌や団体は廃止されましたが、政府は女性への教育や賃金労働を認め、社会改革を進めました。レザーはKashf-e-Hijab政策を実施し、公共の場での女性のヒジャブ着用を禁止しました。しかし、政府の方針に異議を唱えることは弾圧されました。

パフラヴィー朝

1925年にレザー・ハーンがガージャール朝を倒し、パフラヴィー朝が始まりました。教育分野で女性の権利改善が始まり、海外留学支援やテヘラン大学への入学が認められ、1944年には女子教育が義務化されました。1936年には、レザー・シャー・パフラヴィーがKashf-e-hijab法を制定し、ジェンダーによる分離政策を撤廃しました。この政策は、社会進出よりも家庭での役割を重視する女性たちの反発を招きましたが、教育を受けた女性活動家たちは、Kanoun-e-Banovanを通じて女性の権利獲得を推進しました。トルコを訪問したレザー・シャーは、トルコでの西欧化政策に感銘を受け、女性が権利を行使できる社会を目指しました。白色革命以降は、女性参政権や一夫一妻制など、更なる近代化が進められましたが、農村部での貧困は解消されず、民衆の不満は高まりました。そして、1979年のイラン革命によって、これらの改革は覆されることになります。しかし、ホメイニーはイランでトランスセクシャルの性別適合手術を合法化し、国の支援を受けることを認めました。

性的自由

イランはシーア派イスラームのシャリーアに基づく神権政治であり、婚外交渉は非合法とされ、性的自由は厳しく制限されています。婚外交渉が発覚した場合、石打ち刑が科せられることもあり、国際社会から強く非難されています。

服装の自由

イランでは、ヘジャーブを着用しない女性は宗教警察によって逮捕されます。また、体のラインを強調する服装も禁止されています。しかし、テヘランの若い女性の中には、ジーンズに短めのヘジャーブを着用する者もおり、宗教警察から「バッドヘジャービー」として敵視されています。

教育

2022年11月から、女子生徒を狙った毒ガステロが相次いで発生しています。これは女子教育の停止を目的とするものであり、マフサ・アミニの死に対する反政府デモへのイスラム原理主義勢力の報復とみられています。

社会進出

イラン・イスラーム共和国では、女性の社会進出が進んでいる側面もあります。これは、イスラーム化によって、年長者が女子教育や女性の就業に安心感を抱くようになったことが大きいとされています。革命指導者のホメイニー自身も、女性の社会進出は重要であると述べていました。しかし、これはあくまでもイスラームの規範に従う範囲内での容認であり、近年では、シーリーン・エバーディーなどの人権活動家が女性の地位向上を訴えていますが、脅迫や投獄を経験するなど、依然として困難な状況にあります。

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