サウダーデ (久保田早紀のアルバム)

久保田早紀の3rdアルバム『サウダーデ』は、1980年11月21日にリリースされました。このアルバムは、彼女の音楽キャリアにおいて重要な転換期を示す作品と言えるでしょう。

アルバムの構成

アルバムはA面とB面に分かれており、それぞれ異なるコンセプトを持っています。A面はポルトガルのリスボンで録音され、異国情緒あふれる「異国ロマン」テイストの楽曲で構成されています。特に注目すべきは、デビューシングル「異邦人」のアコースティックバージョンです。既存のアレンジとは全く異なる印象を与え、新鮮な魅力を放っています。「アルファマの娘」や「4月25日橋」は、リスボンの名所を舞台にした楽曲であり、現地の雰囲気を色濃く反映しています。

一方、B面は東京で録音され、A面とは対照的にニューミュージック路線の楽曲が収録されています。この構成は、久保田が自身の音楽性を多角的に探求していたことを示唆しています。

制作の背景

久保田早紀は、デビューシングル「異邦人」とデビューアルバム『夢がたり』で大成功を収めました。これらの作品は「異国ロマン」という独自の路線を確立しましたが、続くセカンドシングル「25時」とセカンドアルバム『天界』は、売り上げを大きく落としてしまいました。これは、楽曲のクオリティは高いものの、「二番煎じ」と見なされたためだと考えられています。続くサードシングル「九月の色」では、異国ロマン路線からメランコリックな歌謡曲風に変化しましたが、これもまた売り上げは伸び悩みました。

このような状況の中、レコード会社は久保田にポルトガルでの録音を提案しました。これは、「エキゾチックな旅路線の“完結盤”を、ファドの本場であるリスボンで制作しよう」という意図があったとされています。久保田自身も、この提案を受け入れ、A面では異国ロマン路線に一旦の区切りをつけることを決意しました。

このアルバムのA面とB面の方向性の違いは、久保田が自身の音楽性を模索していた時期を表しています。彼女は「異国ロマン」路線を完結させつつ、新たな音楽の方向性を探っていました。その結果、4枚目のシングル「オレンジ・エアメール・スペシャル」のような明るく、生き生きとした楽曲へと繋がっていきます。

収録曲

全作曲：久保田早紀　編曲：萩田光雄（特記以外）

SIDE A
異邦人 (4分57秒) 作詞:久保田早紀
アルファマの娘 (2分58秒) 作詞:久保田早紀
トマト売りの歌 (2分43秒) 作詞:久保田早紀
18の祭り (2分44秒) 作詞:久保田早紀・山川啓介
4月25日橋 (4分0秒) 作詞:久保田早紀・山川啓介

SIDE B
サウダーデ (5分0秒) 作詞:久保田早紀
九月の色 (3分52秒) 作詞:久保田早紀
憧憬 (4分5秒) 作詞:久保田早紀・山川啓介
真夜中の散歩 (4分27秒) 作詞:山川啓介
ビギニング (4分52秒) 作詞:久保田早紀・山川啓介

関連情報

4月25日橋：リスボンに実在する橋。
アルファマ：リスボンの旧市街。

外部リンク

ソニー・ミュージックエンタテインメントによる紹介ページ
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『サウダーデ』は、久保田早紀の音楽的な変遷を捉える上で重要な作品であり、A面とB面のコントラストを通して、彼女の多才な表現力を堪能できるアルバムと言えるでしょう。

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