サウンド・オブ・サンダー

『サウンド・オブ・サンダー』

作品概要

2005年に製作されたアメリカのSF映画『サウンド・オブ・サンダー』（原題: A Sound of Thunder）は、SF作家レイ・ブラッドベリの短編小説『雷のような音』を原作としています。監督はピーター・ハイアムズが務め、主演はエドワード・バーンズとキャサリン・マコーマック。物語は、タイムトラベル技術が実現した近未来を舞台に、過去への旅行ツアーで発生した小さな事故が、予測不能な形で地球の歴史全体を歪めていくさまを描いています。時間的な因果律の崩壊が、人類に未曽有の危機をもたらします。

ストーリー

西暦2055年、科学技術の飛躍的な発展により、人類は過去への時間旅行を可能にしました。シカゴの企業「TIME SAFARI社」は、この技術を悪用し、独自のタイムマシン『TAMI』を使った白亜紀での恐竜狩りツアーという、富裕層向けの危険なビジネスを展開していました。このツアーには、「過去の時代に物品を残さない」「過去から何も持ち帰らない」といった、歴史改変を防ぐための厳格なルールが定められていましたが、その危険性は常に付きまとっていました。

ツアーの添乗員であるトラヴィス・ライヤー博士らは、旅行者の行動を監視する役割を担っていました。しかし、ある日のツアー中にトラヴィスの液体窒素銃が故障し、予期せぬ事態が発生。目の前で恐竜が暴れ出すパニックの中で、旅行者は歴史改変に繋がる行動をとってしまいます。ツアーから帰還したトラヴィスたちは、当初は偶然と考えていましたが、翌日から不可解な異変が次々と発生し始めます。タイムマシンの着地計算ミスが明らかになるにつれ、彼らはツアーでのトラブルが歴史を書き換えてしまった決定的な原因であることを悟ります。事態の解決策が見つからないまま、政府はTIME SAFARI社の閉鎖を命じます。

追い詰められたトラヴィスらは、タイムマシン『TAMI』の開発者であるソニア・ランド博士に協力を求め、事態の解明に乗り出します。その結果、恐竜時代から「わずか1.3グラムの何か」を持ち帰ってしまったという驚愕の事実が判明します。それが何であるか、そして誰が持ち帰ったのかを突き止めようとする彼らに、歴史改変の「タイム・ウェイブ」（時間の津波）が容赦なく押し寄せ始めます。進化の過程を6500万年分も遡り、現代の生態系を異常な姿に変貌させるこの波は、人類を滅亡の淵へと追い詰めていきます。

タイム・ウェイブが生んだ異変

歴史が歪むことで、現代の動植物は白亜紀の生物と混ざり合ったかのような異形の姿へと変貌します。

食人シダ: ツタ状の植物で、獲物を神経毒で麻痺させ捕食します。
昆虫型生物: アリと甲虫が融合したような生物。大群で襲いかかります。
ヒヒ型生物（バブーンリザード）: ヒヒとトカゲの特徴を持つ生物。体長2メートル近く、爬虫類の硬い皮膚を持ち、群れで人間を襲い捕食します。喉以外は液体窒素銃も通用しません。
コウモリ型生物: 巨大化し、凶暴化したコウモリ。群れで襲撃し、人間を攫います。
食虫バラ: 異常に進化したバラ。棘に毒を持ち、刺された者に殺害衝動を引き起こします。
ウツボ型生物: 巨大なウツボに似た生物。黒目がなく、冠水した地下鉄構内を縄張りとし、獲物を捕食します。

これらの異形の生物たちは、タイム・ウェイブの波が来るたびに現れ、現代社会に混乱と破壊をもたらします。

登場人物

トラヴィス・ライヤー博士: TIME SAFARI社の添乗リーダーで生物学者。冷静沈着ですが、自身の銃の故障が事故の原因となります。事態収拾のため奮闘し、歴史改変を阻止する最後の望みを託されます。
ソニア・ランド博士: タイムマシン『TAMI』の開発者。ハットンに権利を奪われたことに憤りを感じています。歴史改変の危険性を訴え続けており、タイム・ウェイブ解決のための鍵となる人物です。
チャールズ・ハットン: TIME SAFARI社の傲慢な社長。利益優先で安全を軽視し、賄賂を使って安全装置であるバイオフィルターの電源を切らせていました。これが歴史改変の引き金の一つとなります。
ジェニー・クレイズ: TIME SAFARI社の添乗メンバー。行動力があり、トラヴィスとは幼なじみ。歴史改変を阻止する重要な役割を果たします。
マーカス・ペイン、Dr.ルーカス: 他の添乗メンバー。タイム・ウェイブによる異変の中で、それぞれ犠牲となります。
クレイ・デリス: タイムトラベル監督局の役人。ハットンから賄賂を受け取っていますが、歴史改変に巻き込まれます。
* クリスチャン・ミドルトン: ツアー参加者。彼が白亜紀から何かを持ち帰ったことが、歴史改変の直接の原因となります。

解決への試みと結末

ランド博士が考案した「スリングショット策」は、最後のタイム・ウェイブが到達する直前に、事故発生時の過去へタイムトラベルし、歴史改変の原因となる行動を未然に防ぐというものです。トラヴィスはランドの協力のもと、この決死のミッションに挑みます。

過去へと飛んだトラヴィスは、液体窒素銃の故障を阻止し、規則違反を防ぐことに成功します。これにより、歴史改変は回避され、タイム・ウェイブと異形の生物が出現しない本来の歴史が回復します。しかし、歴史改変時代のトラヴィスは、タイムパラドックスの影響で消滅します。

改変後の世界では、ジェニーが歴史変動時代の悲劇を記録した映像をトラヴィスに手渡します。この映像は、TIME SAFARI社の危険な運営を告発するための重要な証拠となります。トラヴィスはランド博士に映像を届け、物語は終わりを迎えます。危険なタイムトラベルビジネスの実態が明らかになることを示唆しています。

作品評価

本作は批評家からの評価は非常に厳しいものでした。映画批評集積サイト「Rotten Tomatoes」では、98件の評論のうち高評価はわずか6%に留まり、平均点は10点満点中3.2点と低迷しました。Metacriticでも平均点は100点満点中24点と散々な評価でした。「まとまりのないストーリー展開、一貫性のない演技に加え、お粗末な特殊効果が作品の欠点を際立たせている」といった批評が多く見られました。

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