サッコの聖母 (ペルジーノ)

『サッコの聖母』は、盛期ルネサンスの巨匠ピエトロ・ペルジーノによって1500年頃に制作された油彩画です。この作品は、聖母マリアが幼児イエス・キリストを礼拝する様子を描いており、聖母子を主題としています。作品名にある「サッコ」（Sacco）とは、イタリア語で「袋」を意味し、画面に描かれている背負い袋に由来しています。

作品の詳細

画面中央の前景には、ひざまずいて幼児キリストを礼拝する聖母マリアが描かれています。幼児キリストは画面左側の白い大きなサッコ（背負い袋）の上に座り、天使が愛情深く抱きしめています。この袋は、彼らがエジプトへ逃避する途上であることを示唆しています。画面右側、聖母の背後には、幼児の洗礼者聖ヨハネがおり、聖母と同様にひざまずいて祈りを捧げています。構図は、ペルジーノの『チェルトーザ・ディ・パヴィアの多翼祭壇画』の中央部分、『聖母子と天使』とほぼ一致しています。ただし、『サッコの聖母』では縦長から正方形に近い画面構成に変更され、上空に描かれていた3人の天使が省略されました。さらに、画面内に幼児キリストが座る袋全体が含まれるように変更され、左側には洗礼者聖ヨハネが追加されたことで、ピラミッド型の安定した構図が作り出されています。

ペルジーノへの帰属はメディチ家の目録にまで遡ることができますが、ペルジーノの他の真筆画と比較すると、いくつかの点で弱点が見られます。そのため、現代の批評家の中には、少なくともその一部をペルジーノの工房の作品と見なす者もいます。しかし、作品が持つバランスのとれた静謐な構図と、瞑想的な雰囲気から、ペルジーノの作品リストから完全に除外することは難しいという見方が一般的です。イタリアの美術評論家ジョヴァンニ・バティスタ・カヴァルカゼルは、この作品を『チェルトーザ・ディ・パヴィアの多翼祭壇画』のテーマの繰り返しであると指摘しました。一方、ベントゥーリは、ウィーンのリヒテンシュタイン美術館に所蔵されているトンドに触発された模倣者の複製であると考察しました。しかし、近年の修復後、批評家たちはこの作品を、祭壇画における聖母像のペルジーノの自筆の複製と見なすようになっています。

『チェルトーザ・ディ・パヴィアの多翼祭壇画』は1499年またはその直後に制作されたと考えられており、この作品も同時期に制作されたと考えられています。

来歴

制作の経緯や初期の来歴については不明な点が多いですが、17世紀にはメディチ家のコレクションに含まれており、1635年にはウフィツィ美術館の優れた作品を集めたトリブーナに記録されています。

複製

この作品の構図は人気があったようで、リヒテンシュタイン美術館には、ペルジーノの工房または追随者によるトンドが所蔵されています。また、ヴェネツィアのジョルジョ・フランケッティ美術館には、ペルジーノの弟子エウセビオ・ダ・サン・ジョルジョが制作したヴァリアントが所蔵されており、フランクフルトのシュテーデル美術館には、工房によるヴァリアントが所蔵されています。

この作品は、ペルジーノの芸術的な才能と、彼の作品が後世に与えた影響を示す重要な例の一つと言えるでしょう。

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