サッサフラス

サッサフラス：芳香と歴史を秘めた樹木

サッサフラスは、クスノキ科サッサフラス属に属する樹木の総称、あるいは北米東部原産の Sassafras albidum を指す名称です。柑橘類を思わせる芳香が特徴的で、古くから様々な用途に利用されてきました。

サッサフラスの性質

サッサフラスは雌雄異株の落葉樹で、高さは数メートルから十数メートルに成長します。葉は独特の形をしており、先端が3つに裂けているものが一般的ですが、裂けないものや2裂、4～5裂するものも同一株で見られます。春には小さな5弁の花を咲かせ、秋には青黒く熟した液果をつけます。

サッサフラス油と利用

サッサフラスの根からは、精油である「サッサフラス油」が抽出されます。この油は、古くから香料として様々な製品に使用されてきました。しかし、サッサフラス油の主要成分であるサフロールには毒性があることが判明し、アメリカ合衆国では食品への使用が禁止されるなど、その利用は厳しく制限されています。現在では、サフロールを除去したサッサフラス油や、クスノキなどから得られる代替品が用いられることが多くなっています。

サッサフラスの木材も利用されており、その独特の香りは楽器製作にも用いられています。特に有名な例として、フェンダー・ストラトキャスターの一部のモデルにサッサフラス材が使用されたことがあります。エリック・ジョンソンの愛器「ヴァージニア」もサッサフラス製であることが判明し、話題となりました。

中国では、サッサフラスは古くから薬用植物としても利用されてきました。また、かつては北米において、サッサフラスの根がルートビアの風味付けに使用されていたという歴史もあります。

フィレパウダー

アメリカ合衆国のケイジャン料理やクレオール料理では、サッサフラスの葉を粉末にしたものを「フィレパウダー（filé powder）」と呼びます。ガンボというシチュー料理のとろみ付けに用いられ、独特の風味と食感を与えます。なお、フィレパウダーにはサフロールは含まれていません。

サッサフラスの種類

現在確認されているサッサフラス属の現生種は、北米東部に1種、東アジアに2種が存在します。

Sassafras albidum: 狭義のサッサフラス。北米東部全域に広く分布しています。
Sassafras tzumu: シナサッサフラス（擦木または檫木）。中国中部から南西部に自生しています。
Sassafras randaiense: ランダイコウバシ（台湾檫木）。台湾に自生しており、日本でも化石として発見されています。
†Sassafras hesperia: 北米北西部で発見された始新世の化石種です。

サッサフラスは、その芳香と歴史、そして多様な利用方法から、今後も人々の関心を集め続ける植物と言えるでしょう。しかし、サフロールを含有する成分の取り扱いには注意が必要です。

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