始新世

始新世（Eocene）の概観

始新世は、古第三紀の第二世にあたる地質時代で、約5,600万年前から約3,390万年前までの期間を指します。この時代は、プリアボニアンからヤプレシアンの4つの期に分けられます。その特徴は、地球の気候、海陸の配置、生物の進化など、様々な側面で変動があったことです。

気候の変化

始新世の幕開けにあたる5500万年前には、暁新世から始新世にかけて再び温暖化が進みました。この時期は、新生代の中でも最も高温な時代であり、湿度も非常に高かったとされています。温暖化の主な要因には、北大西洋での海底火山活動や、メタンハイドレートの大量放出が挙げられます。この結果、地表の気温は5-7℃上昇し、元の二酸化炭素濃度に戻るまでに約3万年を要しました。

始新世の最初にはシベリアに大隕石が衝突し、これが引き起こした気候変動により新しい哺乳類が危機にさらされることとなりました。また、始新世末期、すなわち次の漸新世初期には気温が急激に低下する現象がありました。この変化の原因としては、彗星の衝突や大規模な海退が考えられています。

海陸の分布

始新世においては、地球の海と陸の配置も大きく変化していきました。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸はますます離れ、始新世の中期には連絡が絶たれることとなります。一方で、北アメリカとユーラシアはベーリング海を通じて徐々に接近し、陸橋を形成しました。南米とは既に分離していた南極大陸やオーストラリアも、始新世の半ば以降に分裂を始めます。

生物の進化

生物界に目を向けると、始新世初期にはほとんどの現存哺乳類の目が登場しました。鯨偶蹄目や奇蹄目（ウマ目）などが進化を遂げ、クジラ類もこの時期に現れました。当時の哺乳類は多くが小型で、体重が10kg以下の種が多く見られましたが、ウインタテリウムのような大型の哺乳類も出現しています。

この時代の哺乳類は急速に適応放散を始め、霊長類の真猿亜目の出現もこの時期とされています。また、始新世中期には北米とヨーロッパの生物相が類似しており、これは当時の陸橋が両大陸を結んでいた名残と言えます。温暖湿潤な気候の影響で森林が優勢となり、草本類の分布はまだ限られたものでした。

始新世は、地球規模での環境変化や生物の進化が活発に進行した時代であり、その影響は後続の地質時代にも多大な影響を及ぼしました。

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