サバイバル・オブ・ザ・デッド

サバイバル・オブ・ザ・デッド

『サバイバル・オブ・ザ・デッド』（原題: Survival of the Dead）は、2009年に製作されたアメリカ合衆国のゾンビ映画です。現代ゾンビ映画の礎を築いたジョージ・A・ロメロ監督による作品であり、2007年の前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』の続編として位置づけられます。日本では2010年6月より劇場公開されました。

概要と特徴

本作は、ロメロ監督が一貫して描き続けてきたゾンビによる世界の崩壊を背景に、極限状態における人間の行動原理や社会構造の変化を映し出す作品です。特に注目すべきは、従来のロメロ作品における「ゾンビに噛まれた人間はゾンビとなる」という感染法則に加え、本作では「ゾンビを噛んだ人間もゾンビとなる」という新たな感染経路が描写されている点です。これは、死者との関わり方に対する人間側の能動的な行為が、自身をも破滅に導きうるという、倫理的な問いを投げかける要素となっています。

物語の舞台となるのは、アメリカ東海岸沖に浮かぶプラム島です。この島では、古くから住む二つの家族、オフリン家とマルドゥーン家が、発生した死者蘇生現象に対する考え方の違いから激しく対立しています。オフリン家は死者を「眠らせる」こと、すなわち完全に活動を停止させるべきだと主張する一方、マルドゥーン家は死者を「生かしておく」こと、つまり生前の習慣を繰り返すように管理・利用することを是とします。この根本的な価値観の衝突が、島における悲劇の火種となります。

あらすじ

世界中で死者が蘇り始めてから約一週間後。プラム島では、オフリン家とマルドゥーン家の対立が武力衝突へと発展し、数の劣るオフリン家はリーダーのパトリック・オフリンを含む数名が島を追われる事態となります。

それからさらに数週間後、ペンシルベニア州フィラデルフィア近郊。軍を離反した元州兵のブルーベイカー率いる一団は、物資調達のために襲撃した一団から、偶然生き残った少年を通じて「安全な島」の存在を知らされます。この「安全な島＝プラム島」をインターネット上の動画で宣伝していたのは、島を追放されたパトリックでした。半信半疑ながらも、安住の地を求めてプラム島へと向かうブルーベイカーたち。彼らが辿り着いた島で目にしたのは、衝撃的な光景でした。そこでは、シェイマス・マルドゥーン率いるマルドゥーン家が、ゾンビたちを鎖に繋ぎ、かつての生活行動を模倣させる訓練を行っていたのです。島に到着したブルーベイカーたちは、死者との共存を試みるマルドゥーン家と、死者を完全に排除すべきだと考えるパトリックら追放組、そして島に残るオフリン家の残党たちの間で繰り広げられる壮絶な争いに巻き込まれていきます。

主要登場人物

ブルーベイカー（サージ）: 元ペンシルベニア州州兵のリーダー。階級は二等軍曹。過去のロメロ作品にも同名のキャラクターが登場しますが、本作では権利元の違いから異なる設定で描かれています。過酷な状況下でも冷静さを保ち、仲間を率います。
パトリック・オフリン: プラム島に古くから住むオフリン家のリーダー。死者は安らかに眠らせるべきだと考え、マルドゥーン家と対立します。島を追われた後も、ゾンビから島を取り戻すことを諦めません。
シェイマス・マルドゥーン: プラム島に古くから住むマルドゥーン家のリーダー。死者を「生かしておく」ことを信条とし、ゾンビたちを管理下に置こうとします。権力欲が強く、目的のためなら手段を選びません。
ジャネット・オフリン / ジェーン・オフリン: パトリックの双子の娘。ジャネットは生きた人間として、ジェーンは馬に乗るゾンビとして登場し、二人の運命が島の物語に深く関わります。
トムボーイ: ブルーベイカーの仲間。アフリカ系アメリカ人のレズビアンで、卓越した戦闘能力を持ちます。
フランシスコ: ブルーベイカーの仲間。通称シスコ。水中でゾンビに襲われた際に、その指を噛み切って難を逃れますが、これが後に自身を感染させる原因となります。

スタッフ

監督・脚本はジョージ・A・ロメロが手掛けました。音楽はロバート・カールリ、特殊メイクはフランソワ・ダジュネとグレッグ・ニコテロらが担当しています。

本作は、ゾンビという存在を通して、人間の愚かさ、頑固さ、そして多様な価値観が衝突する様を描き出しており、単なるホラーに留まらないロメロらしい社会派ゾンビ映画の一本と言えるでしょう。

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