サムの息子法

サムの息子法

サムの息子法（Son of Sam law）は、犯罪者が自らの犯罪行為に関する出版や映像化などで得た収入を、犯罪被害者の救済に充てることを目的とした法律です。

概要

この法律は、犯罪者が自身の犯罪を商業的に利用して利益を得ることを阻止するために、1977年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で制定されました。きっかけは、「サムの息子」ことデビッド・バーコウィッツに出版社が高額な手記のオファーを出したことでした。これにより、犯罪の収益性を排除し、犯罪者が自身の罪の悪名を利用できないようにすることを意図しています。

具体的には、書籍の出版や映画化などから得られる収入は、犯罪被害者への補償に充当されます。ニューヨーク州では数多くの改定を経て、2001年に再び採択されました。同様の法律は、アメリカの他の多くの州でも制定されています。

1978年に制定された法律は、連邦最高裁判所によってアメリカ合衆国憲法修正第1条に反するとして違憲判決を受けました。その後、1992年に判決に沿った改正が行われています。

サムの息子法は、犯罪者による罪のビジネス化を防ぐと同時に、被害者や遺族の救済を目的としています。被害者への補償に関する法律としては、州法の他にアメリカ連邦法であるVOCA（犯罪被害者支援法）があります。

日本でも、同様の法律の制定を望む声が上がっています。しかし、日本政府はサムの息子法をモデルとした法律の制定について、「憲法の保障する表現の自由等の観点から、慎重な検討が必要」としています。弁護士の間でも意見が分かれており、議論が続いています。

日本における犯罪加害者の出版例

日本国内においても、犯罪加害者が自らの犯行を本として出版した例がいくつか存在します。

中保喜代春『ヒットマン―獄中の父からいとしいわが子へ』（講談社、2001年） - 宅見若頭射殺事件の実行犯である著者が、犯行の計画から実行、逃亡時の状況まで詳細に記述しています。
武まゆみ『完全自白 愛の地獄』（講談社、2002年） - 本庄保険金殺人事件の実行犯である著者が、自白した犯行の顛末を詳細に綴っています。
元少年Ａ『絶歌』（太田出版、2015年） - 神戸連続児童殺傷事件の犯人である元少年Aの著書。日本でサムの息子法と同様の法の制定を望む声が高まるきっかけとなりました。
市橋達也『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』（幻冬舎、2011年） - リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件の実行犯である著者が、逮捕されるまでの逃亡生活を綴っています。


これらの出版例は、犯罪被害者や遺族の感情を逆なでするだけでなく、犯罪の商業化という観点からも問題視されています。

関連項目

* デビッド・バーコウィッツ - ニューヨークで有罪判決を受けた連続殺人犯。「サムの息子」として知られています。

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