宅見若頭射殺事件

宅見若頭射殺事件とは

1997年8月28日、五代目山口組のナンバー2である若頭、宅見勝が、同じく五代目山口組傘下の中野会組員によって射殺された事件です。暴力団内部の抗争事件として、社会に大きな衝撃を与えました。

事件の発端

事件の発端は、前年の1996年7月10日に発生した中野会会長襲撃事件とされています。この事件後、若頭であった宅見勝が、中野太郎・中野会会長に無断で和解を進めたことが、中野の遺恨となり、事件の動機になったとされています。

事件前の動き

1997年7月、当時中野会の若頭補佐であった吉野和利が総指揮を執り、東京都と大阪府の中野会傘下組織から、宅見の動向を探る偵察部隊と襲撃部隊が選抜されました。当初は東京で宅見を襲撃する計画でしたが、居場所を特定できず断念。その後、大阪での襲撃計画が立てられました。
同年8月27日、宅見が大阪市内のホテルを訪問するという情報が入りましたが、その場には中野も同席することが判明。襲撃は再び見送られました。一方、宅見は翌8月28日、山口組の最高幹部である岸本才三総本部長と野上哲男副本部長と共に、昼食のためJR新神戸駅に隣接する新神戸オリエンタルホテルのティーラウンジへ向かいました。

事件発生

8月28日午後3時20分頃、宅見、岸本、野上の3人は、ティーラウンジの一番奥のテーブルに着席しました。その直後、襲撃犯が38口径と45口径の拳銃で宅見を銃撃。宅見は7発の銃弾を受け、神戸市立中央病院に緊急搬送されましたが、約1時間後の午後4時32分に死亡が確認されました。宅見と同席していた岸本と野上は、標的ではなかったため無事でした。
しかし、襲撃の際、ラウンジの隣のテーブルに座っていた歯科医師の男性が流れ弾に当たり負傷し、病院へ搬送されましたが、事件から6日後の9月3日に死亡しました。

事件後

宅見の告別式は8月31日に執り行われました。同日、山口組組長（当時）の渡辺芳則は、中野を復縁の可能性を残した破門処分としました。しかし、9月3日に流れ弾に当たった歯科医師の男性が死亡したため、渡辺は中野の処分を破門からさらに重い絶縁処分に変更しました。
絶縁された者はヤクザの世界に残ることができず、組織を解散してカタギに戻らざるを得ませんが、中野会は絶縁理由に納得せず、解散せずに独立組織となりました。独立組織となった後は、報復とみられる襲撃で幹部メンバーが殺害されるなど組織力が低下。2003年には中野が脳梗塞で倒れ、渡辺が引退した直後の2005年8月7日に解散届を大阪府警に提出し、解散しました。

事件を巡っては、2004年10月26日に別の詐欺事件で執行猶予判決を受け、その後の捜査で事件への関与が浮上した容疑者が逮捕されたほか、2006年6月30日には実行犯の1人が神戸市の六甲アイランドで病死体で発見されました。また、服役中の実行犯が事件に関する獄中手記を発表したことも知られています。

2013年6月5日、兵庫県警は殺人・銃刀法違反容疑で指名手配されていた、実行犯の指揮役であった財津組組長を逮捕。同年6月27日、神戸地検は財津組組長を殺人と銃刀法違反の罪で起訴しました。

中野は事件への関与を認めず、2018年に自叙伝を発表しましたが、事実誤認が多いと指摘されました。2021年1月10日、中野は84歳で死去しました。

裁判

実行犯の内、一人は逮捕されず、その後病死が確認されています。

実行犯2人への刑事裁判

1999年10月26日 - 神戸地裁は実行犯2人に懲役20年の判決
2000年6月5日 - 大阪高裁で控訴棄却。1人は上告せず確定
2002年1月16日 - 最高裁がもう1人の上告を棄却し、刑が確定

実行犯1人への刑事裁判

2000年1月21日 - 神戸地裁は実行犯1人に懲役20年の判決
2000年7月11日 - 大阪高裁で控訴棄却。上告せず確定

財津組組長への刑事裁判

2014年3月14日 - 神戸地裁で無期懲役の判決
* 2014年7月10日 - 大阪高裁は控訴を棄却、11月26日に最高裁で確定

報道の扱い

宅見勝射殺事件は、多くのメディアで大々的に報道されました。事件発生当日のテレビニュース速報や、翌日の新聞各紙の一面を飾るなど、社会的な関心の高さが伺えます。事件発生から2日間はワイドショーや情報番組でも大きく取り上げられましたが、ダイアナ元皇太子妃の事故死のニュースが報じられるようになると、報道は減少しました。

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