サム・ロイド

サム・ロイド：パズル界の巨匠

サム・ロイド（1841年1月31日 - 1911年4月10日）は、アメリカが生んだ伝説的なパズル作家であり、レクリエーション数学者として、その名を歴史に刻んでいます。本名サミュエル・ロイドとして生まれた彼は、生涯をパズル創作に捧げ、数々の独創的な作品で世界中の人々を魅了しました。

生い立ちと初期の活躍

1841年、ロイドはフィラデルフィアで生を受けました。幼い頃から才能を発揮し、14歳という若さで考案したチェスのパズルが雑誌に掲載されます。これを機に、彼は「チェス・マンスリー」誌をはじめとする多くの雑誌や新聞でパズル欄を担当するようになり、その才能を開花させていきました。

多彩なパズルの創作

1870年頃になると、ロイドはチェス以外の分野にも興味を持つようになり、数学的なパズルや販促用のパズルにも取り組み始めます。1878年には、有名な15パズルを基にしたパズルを発表し、1000ドルの懸賞金をかけたことで大きな話題を呼びました。このパズルは多くの人々を熱狂させましたが、実は解法が存在せず、懸賞金を手に入れた者はいませんでした。15パズル自体はロイドのオリジナルではありませんが、この懸賞金騒動によって、その名が広く知られることとなりました。

ロイドはタングラムにも深い愛情を注ぎ、1903年には700題ものオリジナル問題を収録した著作『The Eighth Book of Tan』を出版しました。彼はこの中で、タングラムは中国で生まれ、4000年の歴史を持つという説を紹介しましたが、これは実はロイドの創作でした。しかし、この逸話は広く信じられ、タングラムの由来の一つとして定着しています。もっとも、タングラムの発祥については中国とする説が現在でも有力です。

ロイドの代表的なパズル

ロイドは生涯にわたり、数多くのパズルを創作しました。その中でも特に有名な作品として、以下のようなものがあります。

子馬のパズル: 3つのピースを組み合わせて、走っている馬のシルエットを作るパズル。シルエットパズルの代表的な作品です。
トリック・ドンキー: ロバの絵と乗り手の絵を組み合わせて、ロバに乗った人の絵を作るパズル。ユーモラスなアイデアが人気を集めました。
ボタンホール: 棒の付いた紐を相手のボタン穴に通し、外させる知恵の輪の一種。英語の「buttonhole」という単語に「他人の興味を引く」という意味があるのは、このパズルが由来とされています。
消えるインディアン: ピースの配置によって、インディアンの像が増減するパズル。視覚的なトリックが用いられています。

チェスプロブレム

ロイドはチェスの問題作成においても才能を発揮しました。彼の最も有名なチェスプロブレムの一つに、「白から始めて5手でメイトにする」という問題があります。この問題には、「白が最も考えにくい駒でチェックメイトする」という条件が付けられており、その意外性が人々を魅了しました。ロイドはこの問題を、ヘンリー・ワズワース・ロングフェローの詩にちなんで「エクセルシオール」と名付けました。

後世への影響

サム・ロイドの作品は、同時代のイギリスのパズル作家、ヘンリー・アーネスト・デュードニーにも影響を与えたと言われています。ロイドの死後、彼の作品は息子によって編纂され、1914年に『Cyclopedia of Puzzles』として出版されました。この本は、ロイドのパズルの集大成として、現在でも多くのパズル愛好家に愛されています。

サム・ロイドは、その独創的なアイデアとユーモア溢れる作品によって、パズル界に多大な貢献をしました。彼の残したパズルは、時代を超えて、私たちに知的興奮と楽しさを与え続けています。

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