サリー鉄道

サリー鉄道の歴史

サリー鉄道（Surrey Iron Railway）は、イギリスのサリー州において最初に運行された公共目的の鉄道です。1803年に開業し、ワンズワースとクロイドンを結んでいました。この鉄道は、歴史的に重要な意味を持ち、世界初の公共鉄道として、運輸気運の大きな変革をもたらしました。

背景

馬車鉄道（ワゴンウェイ）の起源は15世紀の中央ヨーロッパにまで遡ることができ、イギリスでは17世紀初頭から見られるようになりました。18世紀には固い鋳鉄製のレールが導入されていましたが、当時の鉄道はほとんどが専用目的のものでした。

サリー鉄道の起源は1799年、工場主たちが技術者ウィリアム・ジェソップに交通手段の改善を依頼したことに始まります。ジェソップは鉄道の建設を提案しましたが、それは運河よりも建設費が安く済むためであり、さらには河川の水量に影響を及ぼさないという利点もありました。

鉄道会社の設立

イギリスで株式会社の設立は1720年以降制限されていましたが、公共目的の場合は特別な法律を通じて設立が認められました。サリー鉄道会社は、この規制のもとで1801年に設立が認可され、法案が議会を通過して国王の承認を受けました。これにより、運賃の徴収や土地利用の許可を得たのです。

当時、サリー鉄道会社は82人の株主に支えられ、資本金は35,000ポンド（約半分は沿線の工場主たち）でした。

路線

サリー鉄道は、ワンズワースからクロイドンまでの約8.5マイルの距離を結び、ミッチャムで南東に向きを変えていました。この鉄道の全線は複線であり、荷車は馬によって牽引されました。レールは鋳鉄製のもので、当時普及していたL字型のデザインが採用され、内部にフランジが付いていました。

レールの間隔は4フィート2インチに設定され、基本的には1頭の馬が4両の貨車を牽引し、時速約3マイルで運行されました。

開業と貨物輸送

サリー鉄道は1803年7月26日に正式に開業し、記念列車が運転されました。開業前からも部分的に利用されていたことがあり、その貨物としては石炭や肥料、工場製品が主に運ばれていました。旅客輸送は行われず、貨物専用の鉄道でした。

この鉄道は、公共鉄道の概念を広め、多くの関心を集めました。しかし、同時に貨車の重さや貨物の積み替えの問題も指摘されました。

経営と運賃

サリー鉄道会社は線路のみを保有し、貨車や馬は利用者が準備する方式で運営されていました。運賃は貨物の種類や量、距離によって設定されました。経営委員会の多くが沿線工場の主であったため、運賃は低く抑えられました。これは自社の工場の利便性を最優先した結果であり、会社の利益はあまり期待されませんでした。

拡張の提案

ウィリアム・ジェソップは、サリー鉄道をさらに南へ延伸することを提案しており、これに基づいて別会社の設立が進められました。クロイドン・メルシャム・アンド・ゴッドストーン鉄道は1803年に法案が成立し、クロイドンからメルシャム間が開業しましたが、ゴッドストーンまでは延伸されませんでした。

廃止

1830年代後半に入ると、蒸気機関車を使用した鉄道網が発展し、サリー鉄道は時代遅れとなりました。1846年にはサリー鉄道の運行が終了し、その後会社も解散されました。

サリー鉄道の役割は、後の鉄道網の発展に不可欠なものであり、イギリスの交通史において重要な一歩であったことは間違いありません。

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