サルト (ヨルダン)

サルトの概要

サルト（アッ＝サルト、السلط）は、ヨルダンの中西部に位置する重要な都市であり、バルカ県の県都です。歴史的に農業が盛んな地域であり、アンマンとエルサレムを結ぶ古い街道の中間にあります。サルトは標高790mから1,100mに位置するバルカ高原に広がり、ヨルダン川渓谷に接した3つの丘の上に展開しています。そのうちの一つ、ジャバル・アル・カルアには13世紀に建設された城塞の跡が残り、歴史の重みを物語っています。中心部には「風呂屋市場」の意味を持つスーク・ハンマームがあり、ローマ時代の浴場跡があるともされています。また、20世紀半ばまで実際に浴場が利用されていました。2000年には330,570人が住み、ヨルダン全体の6.5%を占めました。

歴史的背景

サルトの歴史は前期青銅器時代にまでさかのぼります。この都市はヨルダン川の東岸の中心（タ大役割を果たし、一時期はトランスヨルダンの首都でもありました。現在のヨルダンの首都アンマンから北西に約1時間の距離にあり、オスマン帝国の石造建築が並ぶ古い街並みが広がっています。ローマ帝国の支配下では、サルトはラテン語で森林を意味する「サルトゥス」と呼ばれ、東ローマ帝国時代には主教が置かれ、重要な都市として繁栄しました。しかし、モンゴル帝国の襲来で一時的に荒廃しますが、1260年から1277年までの間にマムルーク朝のスルタン・バイバルスによって再建されました。その後、オスマン帝国の影響下で再び発展を遂げました。

19世紀末には、ナーブルスの商人による交易ルートの拡大によってサルトは盛況を迎えていました。地元の自然の美しさと豊富な水資源が都市の発展を支え、農村から商業都市へと姿を変えていきました。この時期に様々な伝統的建築が建設され、現在でも多くが残っており、古都の風情を楽しむ観光地となっています。

サルトの産業

サルトは肥沃な土地と高品質の果物や野菜の生産地として知られています。特にオリーブ、トマト、ブドウ、モモなどが主な農産物です。タバコの栽培も盛んで、町の中には今でも伝統的なタバコ店を見かけることができます。サルトは特にブドウの名産地であり、地元ではブドウ汁を煮詰めたお菓子「ハビーセ」が伝統的な食品として親しまれています。サルト産の干しブドウは「スルタナレーズン」として知られ、地元で特に人気があります。

ワーディ・シュアイブと呼ばれる地域はサルト市でも最大級の農業地帯で、広大な農地が広がっています。この谷の名前は、イスラム教の預言者シュアイブやユダヤ教・キリスト教でメルチとして知られるエテロに由来しています。シュアイブはモーゼの義理の父であり、アブラハムの子孫でもある人物とされています。谷に点在する個人農場では、主にブドウやオリーブが栽培されています。

サルトのスポーツ

サルトにはサッカーのプロリーグに所属するアル・サルトSCというクラブチームがあります。地元のスポーツ文化も根強く、多くの市民が応援しています。

世界遺産としての価値

サルトの文化遺産は、世界遺産登録基準のいくつかを満たしており、人類の価値の重要な交流を示すものとして評価されています。建築、技術、記念碑的な芸術、都市計画の発展に関する証拠が現存しています。

サルトはその豊かな歴史と文化、自然の美しさを背景に、訪れる人々に感動を与える魅力的な都市です。

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