サロフのセラフィム

サロフのセラフィム（1759年7月19日 - 1833年1月2日）は、ロシア正教会の著名な聖人であり、長老として広く知られています。彼の生涯は、隠遁生活と霊的な癒しの奇跡によって特徴づけられ、没後も多くの信者に影響を与え続けています。1903年にロシア正教会によって列聖されました。

生涯と教え

セラフィムは自著を遺していませんが、モトフィロフとの対話集が死後に出版され、彼の教えを知る上で貴重な資料となっています。この対話の中で、彼はキリスト教信仰の目的は「聖神（聖霊）の獲得にある」と述べています。彼は、斎、徹夜の祈り、施しなど、あらゆる善行は聖霊を獲得するための手段に過ぎないと説き、その獲得方法についても詳細に教えています。この教えは、彼の精神生活の中心をなしており、多くの信者に影響を与えました。

彼は、著作や論考ではなく、その生き方を通して人々に影響を与えました。隠遁修道生活や数々の癒しの奇跡によって、生前から多くの巡礼者が彼を訪れました。セラフィムは、訪れる人々に常に親切に接し、季節を問わず「ハリストス復活！」と挨拶しました。これは、復活祭の期間に行われる挨拶ですが、セラフィムは復活の喜びを常に共有したいという思いから、時期を限定せずこの挨拶を用いていました。

隠遁修道

セラフィムは、森深く分け入って独りで修業する生活を送りました。これは、14世紀から15世紀にロシア正教会で盛んになった荒野修道運動の流れを汲むもので、砂漠を模した自然の中で修業する東方教会の伝統に根ざしています。ロシアの修道士たちは、冬季に極寒となる森林を砂漠に見立てて修業しました。18世紀半ばにこの荒野修道が復興し、セラフィムはその担い手の一人となりました。

また、セラフィムは後進の指導にもあたりました。彼が指導したジヴェエヴォ女子修道院は大きく発展しました。

対話と語録

モトフィロフとの「対話」は、セラフィムの教えを理解する上で非常に重要です。この対話の中で、彼は信仰生活の目的、聖霊の獲得方法、そしてその重要性について詳しく語っています。彼は、貿易や商売の話を例えに用いるなど、商人出身であることを反映した言葉遣いも用いています。対話は、聖霊を主要なテーマとして様々な側面から掘り下げています。

セラフィムの語録として知られる言葉には、「ただ一つのことが欠けている。―それは確固とした意志である」というものがあります。これは、現代において恵みの奇蹟が起こりにくい理由を尋ねられた際に答えたとされています。また、「（己の）霊を鎮めよ、されば爾の周りの人々は救はれん」という言葉も有名です。

略歴

セラフィムは1759年7月19日にクルスクで商人の子として生まれました。1778年11月にサロフ修道院に入り、1786年に修道士となりました。修道司祭に叙聖された後、隠遁修道に入り、森林の庵で沈黙と孤絶の生活を送りました。1825年頃からは庵を開いて人々に教え始め、1831年にはモトフィロフの病を癒し、対話を行いました。1833年1月2日に永眠し、1903年7月19日に列聖されました。

記憶日

彼の記憶日は、グレゴリオ暦では1月15日となります。これは、彼が永眠したユリウス暦の1月2日をグレゴリオ暦に換算したものです。修正ユリウス暦を使用する教会では、記憶日は1月2日となります。

影響と関連事項

サロフのセラフィムは、現在でも多くの正教徒から敬愛されています。彼の教えと生き方は、信仰生活における聖霊の重要性を強調し、現代の信者にも大きな影響を与え続けています。彼にちなんで名付けられたセラフィモフスコエ墓地には、プーチン大統領の両親を含む多くのロシア兵が埋葬されています。

参考文献

• - 及川信（一部に川又一英寄稿）『ロシア正教会と聖セラフィム』（サンパウロ、2002年）
• - イリナ・ゴライノフ（エドワード・ブジョフトスキ訳）『サーロフの聖セラフィーム』（あかし書房、1985年）
• - 高橋保行『ギリシャ正教』（講談社学術文庫、1980年）

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