サワアザミ

サワアザミ（沢薊・鶏頂草）

サワアザミ（学名: Cirsium yezoense）は、キク科アザミ属に分類される多年草です。若く柔らかい茎や葉は食用とされ、山菜として親しまれています。

分布と生育環境

アザミ属の植物は、広い範囲に分布するものと、特定の地域にのみ生育する固有種があります。サワアザミは比較的広い分布域を持ち、北海道南部から本州の中部地方以北（北陸側、中部、奥羽地方）にかけて分布しています。主に日本海側の山地に多く、山沿いの平地から山間の盆地にかけて、沢沿いの林縁や川のそばなど、湿り気のある場所に大小の群生を作ります。

形態・生態

サワアザミは多年生の草本で、茎は直立し、高さは通常1メートルほどに成長します。まれに3メートルに達することもあります。茎にはクモ毛が見られます。葉は広楕円形で羽状に中裂し、他のアザミに比べて葉が大きく、質が薄くて柔らかいのが特徴です。葉の表面はざらつき、とげは比較的穏やかです。

花期は秋（9月から10月）で、枝の先に淡紅色の大型の花を横向きから下向きに10数個つけます。花は筒状花のみで構成されています。総苞の基部にある4-6枚の苞葉が特徴的で、花の下から立ち上がります。総苞にはクモ毛があり、粘りはありません。総苞片の先に刺針はありません。

食用

サワアザミは食用可能な野草としても知られています。食用とするのは、茎の柔らかい部分と葉です。採取の適期は5月から6月頃で、高山地帯では7月頃が最適とされます。サワアザミは爽やかな芳香を持ち、茎は皮を剥いて、葉はそのまま天ぷらや油炒め、甘い味付けの煮付け、汁の実などに利用されます。また、茹でておひたしや和え物にすることも可能です。

調理例

天ぷら：サワアザミの葉や茎をさっくりと揚げたもの。ほのかな苦味と香りが楽しめます。
油炒め：ごま油などで炒めると、風味が引き立ちます。
煮付け：甘辛い味付けで煮ると、ご飯によく合うおかずになります。
おひたし：さっと茹でて、醤油やポン酢で和えるシンプルな一品です。

参考文献

高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、160頁。ISBN 4-05-401881-5。
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎ほか編『日本の野生植物 草本Ⅲ 合弁花類』平凡社、1981年。

関連項目

* アザミ

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