ペリカン目

ペリカン目の分類：歴史と現状

ペリカン目 (Pelecaniformes) は、水鳥を含む鳥類の分類群です。かつては『全蹼目 (Steganopodes)』と呼ばれ、4本の指全てに水かきを持つ（全蹼足）鳥類のグループとして定義されていました。しかし、分子系統解析の進歩により、この分類は大きく見直されることになります。

伝統的なペリカン目には、ペリカン科以外にも、カツオドリ科、グンカンドリ科、ウ科、ネッタイチョウ科などが含まれていました。これらの鳥類は、水かきや生活様式に共通点が見られることから、一つのグループにまとめられていました。しかし、遺伝子情報に基づいた系統解析の結果、これらの科は互いに近縁ではないことが明らかになり、分類体系の見直しが必要となりました。

現在のペリカン目は、ペリカン科 (Pelecanidae) のみを包含する、非常に小さな分類群となっています。ペリカン科には、特徴的な大きな嘴と喉袋を持つペリカン8種が含まれます。かつてペリカン目とされていた他の科の鳥類は、現在ではコウノトリ目やカツオドリ目などに分類されています。

ペリカン科の特徴

ペリカン科は、大型の水鳥で、長いクチバシと喉袋を特徴とします。モモイロペリカンなどがその代表的な種です。全ての指に水かきが発達した全蹼足（ぜんぼくそく）を持ち、沿岸部や淡水域に生息し、魚などの水生小動物を捕食します。雛は、親鳥の世話が必要な半晩生性・就巣性です。

コウノトリ目からペリカン目に移された科

分子系統解析の結果、ペリカン科と近縁であるとされた複数の科が、コウノトリ目からペリカン目に移されました。これらには以下の科が含まれます。

トキ科 (Threskiornithidae): 約34種
サギ科 (Ardeidae): 約66種
シュモクドリ科 (Scopidae): 1種
ハシビロコウ科 (Balaenicipitidae): 1種

これらの科は、ペリカン科と同様に水辺に生息する鳥類ですが、水かきはペリカン科ほど発達しておらず、半蹼足です。

カツオドリ目へ分離された科

伝統的にはペリカン目に含まれていましたが、分子系統解析の結果、ペリカン科とは遠縁であると判明し、カツオドリ目 (Suliformes) に分離されました。このグループには以下の科が含まれます。

グンカンドリ科 (Fregatidae): 大型で高い飛行能力を持つ海鳥。
カツオドリ科 (Sulidae): 空中から海に飛び込み、魚を捕食する海鳥。
ウ科 (Phalacrocoracidae): 長時間潜水し、魚を捕食する海鳥。ウミウ、カワウなどが含まれる。
ヘビウ科 (Anhingidae): ウ科と同様に潜水を得意とする海鳥。魚をクチバシで突き刺して捕食する点でウ科と異なる。

ネッタイチョウ目へ分離された科

ネッタイチョウ科 (Phaethontidae) は、かつてペリカン目のネッタイチョウ亜目として分類されていましたが、系統的に離れていることが明らかになり、ネッタイチョウ目 (Phaethontiformes) として分離されました。

絶滅科

プロトプテルム科やペラゴルニス科など、絶滅した科も、かつてペリカン目に含まれていましたが、現在の分類体系ではその位置付けは明確ではありません。

ペリカン目の亜目

伝統的な分類では、欠全蹼足であるグンカンドリ科をグンカンドリ亜目、その他の科をペリカン亜目に分類していましたが、この分類は単系統ではありませんでした。

目分類の異説

ペリカン目の分類は、分子系統解析の結果に基づいて、大きく変更されてきました。アメリカ鳥学会や国際鳥類学会議など、複数の機関が異なる分類体系を提案し、現在に至るまで分類体系の議論が続いています。

系統

分子系統解析に基づいた最新の系統樹では、伝統的なペリカン目に含まれていた科が、複数の目に分散していることが示されています。ネッタイチョウ科は、他の「全蹼類」とはかなり離れた位置に位置づけられています。

このように、ペリカン目の分類は、科学技術の進歩とともに常に変化し続けています。今後も新たな知見が得られることで、さらに分類体系が改訂される可能性があります。

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