サンクム

サンクム・リアハ・ニヨム：カンボジアの栄光と混迷

サンクム・リアハ・ニヨム（人民社会主義共同体）は、1950年代から1970年代にかけてカンボジアを統治した政治組織です。ノロドム・シハヌーク殿下のもと、カンボジアの近代化を推し進めましたが、その後の内戦とクメール・ルージュによる大虐殺という悲劇を招く遠因にもなりました。

成立の背景と理念

1955年、シハヌークは国王の地位を父に譲り、自ら首相として政治の舞台に立ちます。その基盤として結成されたのがサンクムでした。綱領では、王制、仏教、独立を維持しつつ、社会主義と民主主義を導入することで、カンボジアの古き良き時代を再現することを目指していました。

総選挙で圧勝したサンクムは、シハヌークのもとで一党支配体制を確立します。しかし、その性格は単なる政党ではなく、国民運動としての側面も持ち合わせていました。シハヌークは、左右の勢力を取り込み、幅広い支持を集めることで、安定した政権運営を目指しました。

包括[[政党]]化と内部対立

サンクムは、王制社会主義を掲げ、中道左派から左翼まで、幅広い勢力を取り込みました。しかし、その結果、組織内には左右両派の対立が生まれることになります。また、右派の自由クメールや極左のカンボジア共産党（後のクメール・ルージュ）といったゲリラ組織の活動も活発化し、政情は不安定化していきました。

サンクムは、総選挙で常に全議席を独占し、その権力を磐石なものとしていきました。しかし、その過程で、社会主義は縁故主義へと変質し、国営企業は幹部によって支配されるようになります。当初の仏教社会主義の理念からはかけ離れ、国民の不満は高まっていきました。

ベトナム戦争と中立政策の破綻

ベトナム戦争が激化するなか、シハヌークは中立政策を維持しようと努めました。しかし、アメリカ軍による北ベトナム爆撃や、ホーチミン・ルートの一部としてカンボジア領内が利用されることを黙認したことで、アメリカとの関係は悪化します。アメリカ軍はカンボジア領内への爆撃を加え、シハヌーク政権の排除を目指すようになります。

体制の崩壊と内戦へ

サンクム体制は、内部からも徐々に崩壊していきました。ロン・ノルら親米派によるクーデターにより、シハヌークは国家元首の地位を追われ、アメリカ軍の大規模な軍事介入を招き、カンボジアは内戦へと突入します。シハヌークは、これまで敵対していたクメール・ルージュと手を結び、ロン・ノル政権に対抗しますが、その後の悲劇を防ぐことはできませんでした。

サンクムは1971年に解散し、その役割を終えます。しかし、シハヌークを支持する勢力は、その後の民主カンプチア政権下でも基盤を維持し、フンシンペック結成へと繋がっていきます。

サンクムへの評価

サンクムに対する評価は分かれています。保守的で権威主義的な側面を批判する意見がある一方で、コミュニティ開発を通じた民主主義への参加を促した実用的な試みとする見方もあります。また、その後の内戦やポル・ポト時代と比較して、安定した時代だったと懐かしむ高齢者も少なくありません。

サンクム・リアハ・ニヨムは、カンボジアの歴史において重要な役割を果たした政治組織です。その功績と限界、そしてカンボジア社会に与えた影響は、今もなお議論の対象となっています。

カンボジア現代史を理解する上で、サンクム・リアハ・ニヨムは避けて通れないテーマと言えるでしょう。

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