サンショウウオ属

サンショウウオ属（Hynobius）について

サンショウウオ属（Hynobius）は、両生綱有尾目サンショウウオ科に分類されるグループです。この属は、東アジアを中心に、特に日本に多くの固有種が生息することで知られています。

分布

サンショウウオ属は、大韓民国、中華人民共和国東部、台湾、朝鮮民主主義人民共和国、そして日本に分布しています。かつてはトルクメニスタンにも生息していたとされる記録がありますが、100年以上前に採集された2標本のみで、現在は確認されていません。日本には、2011年時点で18種、属全体の約60%の種が固有種として生息しています。

形態

サンショウウオ属の主な形態的な特徴としては、以下の点が挙げられます。

鋤骨歯列が発達している。
涙骨が他の骨に覆われて不明瞭である。
後肢の指の数は4本または5本である。
染色体数が種によって異なる。
卵嚢の形状は種ごとに大きな違いがある。

特に、染色体数が種によって異なる点は、他の属との大きな違いです。また、エゾサンショウウオの絶滅個体群では、幼形成熟した例が報告されています。

分類

かつては、涙骨が露出する個体がいることからオオダイガハラサンショウウオを別の属（Pachypalaminus属）に、また染色体数や肋条が少ないこと、鋤骨歯列の特徴からエゾサンショウウオを別の属（Satobius属）に分割する説がありましたが、現在では否定されています。現在の分類は、Amphibian Species of the World（2018）およびAmphibiaWeb（2018）に基づいています。和名については、2011年までに記載された日本産以外の全種を西川（2011）、日本産の種は日本爬虫両棲類学会の標準和名に従っています。

サンショウウオ属の種リスト

アベサンショウウオ (Hynobius abei)
アマクササンショウウオ (Hynobius amakusaensis)
アンチサンショウウオ (Hynobius amjiensis)
アリサンサンショウウオ (Hynobius arisanensis)
オオダイガハラサンショウウオ (Hynobius boulengeri)
シナサンショウウオ (Hynobius chinensis)
オオイタサンショウウオ (Hynobius dunni)
タイワンサンショウウオ (Hynobius formosanus)
コガタタイワンサンショウウオ (Hynobius fucus)
ヒョウガサンショウウオ (Hynobius glacialis)
ガバシャンサンショウウオ (Hynobius guabangshanensis)
マホロバサンショウウオ (Hynobius guttatus)
ハクバサンショウウオ (Hynobius hidamontanus)
イシヅチサンショウウオ (Hynobius hirosei)
ベッコウサンショウウオ (Hynobius ikioi)
アカイシサンショウウオ (Hynobius katoi)
ヒダサンショウウオ (Hynobius kimurae)
チョウセンサンショウウオ (Hynobius leechii)
トウホクサンショウウオ (Hynobius lichenatus)
マオエルシャンサンショウウオ (Hynobius maoershanensis)
ミカワサンショウウオ (Hynobius mikawaensis)
ブチサンショウウオ (Hynobius naevius)
カスミサンショウウオ (Hynobius nebulosus)
クロサンショウウオ (Hynobius nigrescens)
オキサンショウウオ (Hynobius okiensis)
オオスミサンショウウオ (Hynobius osumiensis)
サイシュウサンショウウオ (Hynobius quelpaertensis)
エゾサンショウウオ (Hynobius retardatus)
ソボサンショウウオ (Hynobius shinichisatoi)
ソナンサンショウウオ (Hynobius sonani)
コガタブチサンショウウオ (Hynobius stejnegeri)
ホクリクサンショウウオ (Hynobius takedai)
トウキョウサンショウウオ (Hynobius tokyoensis)
ツシマサンショウウオ (Hynobius tsuensis)
トルクメニスタンサンショウウオ (Hynobius turkestanicus)（絶滅？）
(Hynobius unisacculus)
コリサンショウウオ (Hynobius yangi)
イーウーサンショウウオ (Hynobius yiwuensis)

生態

サンショウウオ属の多くの種は、変態後は繁殖期を除いて水に入ることはまれです。繁殖場所については、種によって流水域で繁殖するものと止水域で繁殖するものに分かれます。サンショウウオ科の中で、止水域で繁殖するのはサンショウウオ属とキタサンショウウオ属のみです。

まとめ

サンショウウオ属は、東アジアの様々な環境に適応した多様な種を含む興味深いグループです。特に日本には固有種が多く、それぞれの種が異なる生態や形態を持っているため、生物多様性の観点からも重要な研究対象となっています。

出典

Amphibian Species of the World (2018)
AmphibiaWeb (2018)
西川 (2011) による日本産以外の全種の和名
* 日本爬虫両棲類学会の標準和名

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