サンジョヴェーゼ

サンジョヴェーゼ：イタリアを代表する赤ワイン用ブドウ品種

サンジョヴェーゼ（伊：Sangiovese）は、イタリアで最も広く栽培されている赤ワイン用のブドウ品種です。その多様な性質と幅広い適応性により、カジュアルなワインから長期熟成型の高級ワインまで、様々なスタイルのワインを生み出しています。

名称の由来と多様な呼び名

サンジョヴェーゼという名前が初めて記録されたのは、1600年、農学者ジョヴァン・ヴィットーリオ・ソデリーニの著作でした。名前の由来は「ジュピターの血（sanguis Jovis）」であると言われています。

また、地域によって様々な名前で呼ばれることもサンジョヴェーゼの特徴です。トスカーナ州では、モンタルチーノ地区で「ブルネッロ（Brunello）」、モンテプルチアーノ地区で「プルニョーロ・ジェンティーレ（Prugnolo Gentile）」、スカンサーノ地区で「モレッリーノ（Morellino）」と呼ばれています。さらに、フランスのコルス島では「ニエルッキオ（Niellucciu）」として知られています。

起源と関連品種

長らくトスカーナがサンジョヴェーゼの起源と考えられていましたが、2004年のDNA解析により、トスカーナで補助的に用いられるチリエジョーロと、カラブリア州原産のカラブレーゼ・ディ・モンテヌオーヴォの交配によって生まれたことが判明しました。

サンジョヴェーゼは突然変異を起こしやすい品種であり、多数のクローンが存在します。大きく分けると、果実が大きく力強いワインとなる「サンジョヴェーゼ・グロッソ」と、果実が小さく軽やかなワインができる「サンジョヴェーゼ・ピッコロ」の2つの系統があります。

また、サンジョヴェーゼは、イタリア南部で栽培されているフラッパート、ガリオッポ、ネレッロ・マスカレーゼなど、いくつかの品種の親であると考えられています。

栽培の特徴

サンジョヴェーゼは晩生の品種であり、生育期に温暖な気候が必要です。標高の低い地域では温暖な気候によりボリュームのあるワインができ、標高の高い地域では寒暖差が大きいため繊細なワインになる傾向があります。晩生である一方で芽吹きが早いため、霜害や収穫期の降雨などのリスクも抱えています。

土壌に関しては、粘土石灰質の土壌によく適合します。特に、キアンティ・クラシコ地区やモンタルチーノ地区に発達するガレストロと呼ばれる泥灰土からは、高品質なワインが生まれます。

主な生産地域

サンジョヴェーゼは、ワイン用ブドウ品種として2010年時点で栽培面積が世界13位でしたが、そのほとんどがイタリアに集中しています。特にイタリア中部を代表する品種として知られており、2021年におけるイタリア国内での栽培面積は67,634ヘクタールと、イタリアで最も栽培面積が大きい品種です。近年では、アメリカやオーストラリアなどの新興国でも栽培が広がっています。

イタリア

トスカーナ州はサンジョヴェーゼの主要な生産地であり、生産量の9割程度が赤ワインです。キアンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノなど、サンジョヴェーゼを主体としたD.O.C.G.（統制保証原産地呼称）ワインが多く存在します。キアンティはシエナ周辺の広い地域で造られ、サンジョヴェーゼを70％以上使用する必要があります。伝統的な地域だけで表示を許されるキアンティ・クラシコでは、サンジョヴェーゼを80％以上使用する必要があります。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、モンタルチーノ地区で造られるワインで、サンジョヴェーゼをブルネッロと呼んでいます。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノでは、ブルネッロを100%使用し、長期熟成に向いた高品質なワインが生産されます。

スーパー・タスカンは、イタリアのワイン法にとらわれずにトスカーナ地方で優れたワインを造る動きの中で生まれたワインです。サンジョヴェーゼとカベルネ・ソーヴィニヨンなどのフランス系品種のブレンドが行われることが多いです。

トスカーナ州周辺のエミリア・ロマーニャ州、ウンブリア州、マルケ州、ラツィオ州などでも広く栽培されています。

フランス

コルス島は18世紀までジェノバ領であったため、イタリアの文化的影響が強く残っています。コルス島で最も多く栽培されているのはサンジョヴェーゼであり、現地ではニエルッキオと呼ばれ、コルスの栽培面積の35％を占めています。

その他の地域

イタリア系移民の多いアルゼンチン、カリフォルニア、オーストラリアなどにもサンジョヴェーゼが持ち込まれ、栽培されています。

ワインのスタイルと料理との相性

サンジョヴェーゼから産出されるワインは、カジュアルなものから重厚な高品質ワインまで、幅広いスタイルがあります。色調は中程度で、チェリーやプラムなどの果実、スミレ、ハーブなどの香りが特徴です。料理との組み合わせとしては、トマトを使った料理との相性が特に良いとされています。

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