サンタマリアナイトクラブ火災

2013年1月27日未明、ブラジル・リオグランデ・ド・スル州サンタマリアのナイトクラブ「Kiss」で発生した火災は、239名もの尊い命を奪う大惨事となりました。この火災は、ブラジルの火災史上、過去のニテロイのサーカス会場火災に次ぐ規模であり、近年のナイトクラブ火災としては、中国洛陽市のクリスマス火災に次ぐ甚大な被害をもたらしました。

火災発生の経緯

火災は、1月26日の夜に始まった「Agromerados」というパーティー中に発生しました。サンタマリア連邦大学の学生らが集まり、2組のバンドによる演奏が予定されていました。しかし、27日未明、バンド「Gurizada Fandangueira」の演奏中、演出用の花火に点火した際、炎が天井の防音材に引火し、瞬く間に燃え広がりました。

現場は混乱を極め、出口付近では将棋倒しが発生しました。誘導灯の不備や非常口の不足が、更なる犠牲者を出す要因となりました。犠牲者の多くは18歳から30歳までの若者でした。

被害拡大の原因

火災による犠牲者が多数に及んだ背景には、いくつかの要因が複合的に絡み合っていました。

違法な花火演出: 火災の原因は、クラブ内での違法な花火の使用でした。花火の火花が天井の防音材に引火し、火災が発生しました。
不十分な避難経路: 正面玄関以外に外部に繋がる非常口がなかったことが、被害を拡大させる大きな要因となりました。また、避難経路の表示も不十分で、多くの人が出口を見つけられず、逃げ遅れてしまいました。
過剰な収容人数: クラブには、収容能力を超える2000人もの客が詰めかけていました。この過密状態が、避難をさらに困難にしました。
有毒ガス: 火災によって、天井に貼られていたポリウレタンフォームからシアン化水素ガスが発生しました。犠牲者の死因の約9割が煙を吸ったことによるもので、有毒ガスが避難を妨げ、多くの人を死に至らしめました。
* 避難経路の誤認: 多くの犠牲者が、出口と間違えてトイレに逃げ込み、閉じ込められた状態で発見されました。

調査と責任

火災後、警察の捜査により、違法な花火演出が原因であったことが明らかになりました。クラブ経営者とバンドメンバーの計4人が逮捕されましたが、そのうち経営者の男性は収容先の病院で自殺を図りました。

また、州消防署は、建物の非常口が不十分であること、花火の使用権限がないことを認識していながら、クラブの営業許可を出していました。許可証には、出口が2箇所あると虚偽の記載がされており、消防署や市当局の監督責任が厳しく問われることになりました。

事件後の影響

この事件は、ブラジル全土に大きな衝撃を与え、政府は安全対策の徹底を指示しました。全国の同種の施設に対する査察が行われ、多くの施設が閉鎖されました。サンパウロ市だけでも、60％の施設が保安基準を満たしていなかったことが明らかになりました。

また、ブラジル大統領が急遽外遊を切り上げて帰国し、遺族を見舞うなど、国を挙げてこの事件に向き合いました。サンタマリア市は30日間喪に服し、国際サッカー連盟もイベントを中止するなど、各方面に影響が及びました。さらに、アルゼンチンからは、移植用の皮膚提供の申し出があるなど、国際的な支援も行われました。

この火災は、施設の安全対策の重要性を改めて認識させ、人々の防災意識を高める大きな教訓となりました。

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