サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂

サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂：ローマの歴史と芸術が息づく聖堂

サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂は、ローマのトラステヴェレ地区に位置する、長い歴史を持つ教会です。その起源は5世紀に遡り、数々の変遷を経て現在の姿となりました。ロマネスク様式を基調とした建築、そして内部を彩るモザイクや美術品は、訪れる人々を魅了し続けています。

歴史

聖堂の地にまつわる伝説として、キリスト誕生前の紀元前38年に油のような液体が噴出したという話が残っています。これはユダヤ人の間でメシアの到来の兆しと解釈されたと言われています。

聖堂自体の歴史は、4世紀に遡ります。当初は簡素な建物でしたが、410年のゴート族によるローマ劫掠で被災。その後、聖母マリアに捧げられる聖堂として再建されました。12世紀には、教皇インノケンティウス2世によって大規模な改築が行われ、現在のロマネスク様式の聖堂となりました。

その後も13世紀に後陣円蓋のモザイクが、16世紀には格天井が、17世紀には後陣下段のフレスコ画が制作されるなど、長い年月をかけて聖堂は整備されていきました。19世紀には、身廊部分の床装飾やファサードのモザイク周辺のフレスコ画が修復されています。

現代では、ローマにおける聖母マリアに捧げられた教会の中でも、特に重要な聖堂の一つとして位置づけられています。

建築

聖堂の建築様式はロマネスクに分類されますが、内部には古代ローマ時代の円柱や、ファサードのポルチコ上部の彫像など、ロマネスク以外の要素も見られます。

ファサード

聖堂のファサードは、サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ広場に面しています。上部にテラスが付属したポルチコ（ナルテックス）があり、その奥の壁面には12世紀のモザイクと、色あせたフレスコ画が描かれています。モザイクは『授乳の聖母』を中心に、左右に5人ずつの乙女が配された構図となっています。

北側には鐘楼が併設されています。

内部

ポルチコから内部に入ると、3つの扉口があり、主身廊と両側廊へと続いています。内部は三廊構成のバシリカ式平面で、身廊と側廊を隔てる柱列は古代風のデザインです。天井は金箔で彩られた格天井で、16世紀初頭の改修によるものです。床は大理石で装飾され、身廊には信者のための席が設けられています。側廊には南北に複数の礼拝堂が並んでいます。

内陣

内陣には、祭壇天蓋に覆われた祭壇があります。祭壇前面にはイエスのイコンが飾られています。祭壇手前の右手には「FONS OLEI」という文字盤があり、これは聖堂の歴史で触れた油の噴出伝説に由来するものです。同様に、「OLEA SANCTA」という装飾が施された壁面の幕屋もあります。

後陣

後陣の黄金のモザイクは非常に重要な要素です。最上部のドーム部には、キリストと聖母マリアの戴冠を描いた『戴冠の聖母』の図像があり、周囲には殉教者やインノケンティウス2世らが描かれています。その下には、ピエトロ・カヴァリーニによる聖母の生涯を描いた図が4枚並び、さらに下段には17世紀のフレスコ画と、聖母子、パウロとペテロのモザイクが続きます。最下段には聖歌隊席が設けられています。

慈悲の聖母

聖堂の左袖廊奥にある礼拝堂には、イコン『慈悲の聖母』が安置されています。705年から707年に制作されたもので、当時の教皇ヨハネス7世によって寄進されました。聖母子像であり、マリアの衣装は豪華絢爛なものとなっています。

アクセス

トラム8号線の停留所ベッリ広場から徒歩5分です。

サンタ・マリア・イン・トラステヴェレ聖堂は、ローマの歴史と芸術に触れることができる貴重な場所です。ぜひ訪れて、その美しさと歴史を感じてみてください。

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