サンダードルフィン

「サンダードルフィン」（英語名称: Thunder Dolphin）は、東京都文京区にある複合商業施設「東京ドームシティ」内のエンターテインメントエリア「ラクーア」に設置されている大型ローラーコースターです。東京ドームシティアトラクションズが運営しており、アート引越センターがアトラクションの協賛企業となっています。乗車時には、「ゼロ・いち・に・サンダー！」という掛け声でゲストの気分を盛り上げます。

概要と歴史

サンダードルフィンは、後楽園ゆうえんち（現在の東京ドームシティアトラクションズ）の旧コースターランドを再開発した際に、ラクーアの開業に合わせて建設されました。2003年 5月1日にラクーアのオープンと同時に営業を開始。開業当時は、都内では最も高い場所からスタートし、最も速い速度に達するコースターとして注目を集めました。

建設を巡っては、近隣のマンション住民から、コースター利用者の声による騒音などが生活環境や健康に悪影響を及ぼすとして、建設反対の声があがりました。住民111人が東京都の公害審査会に調停を申請する事態となりましたが、文京区が独自の調査を実施した上で、東京ドーム側に対策を要請することで最終的に問題は収束しました。

長年にわたり運行されてきた車両の更新に伴い、2022年10月10日をもって一時的に営業を休止しました。休止に先立ち、劇場アニメ「劇場版転生したらスライムだった件紅蓮の絆編」とのコラボレーションイベント「転生してもサンダードルフィンになる件」が同年9月1日から10月10日まで開催されました。このイベントでは、車両がコラボデザインのラッピング仕様になったほか、旧車両での最後の乗車体験と、後に導入される新車両の試乗会に参加できる「新旧車両乗り比べチケット」が特別に販売されました。

新しい車両は2023年4月6日から運行を開始し、ゲストを迎えています。

コースレイアウトと特徴

サンダードルフィンのコースは、地上80.5メートルという非常に高い地点からスタートします。最初のドロップは最大傾斜角74度という急角度で、重力に身を任せて一気に落下します。

落下の後は、ラクーアの建物群の中を縫うように走行します。具体的には、ラクーアビルの屋上を高速で駆け抜けたり、建物の壁面に設けられた穴の中を通過したりと、都市空間を疾走する感覚を味わえます。コースのハイライトの一つは、東京ドームシティのシンボルであるセンターレス大観覧車「ビッグ・オー」の中央の空洞部分を潜り抜ける大胆な設計です。この後、再びドロップと急上昇を繰り返し、一周目の降下ルートと並走する形でホームへと戻ります。

コース全体の特徴としては、イルカが水中を泳ぐような滑らかさとダイナミックさを連想させる、高速での走行と細かく連続するキャメルバック（短い丘による浮遊感）が設定されています。

コースの高架構造物の直下は、東京ドームシティ内の歩行者デッキと立体交差している箇所が多く見られます。また、コースの約4割は外部の幹線道路である春日通りに面しています。

巻き上げ装置には、多くのコースターで使われるローラーチェーン式よりも高速なウインチ方式が採用されています。これにより、地上80メートルを超える最高地点まで約30秒という短時間で上昇可能です。巻き上げ時の角度も45.5度と急峻です。巻き上げ機本体は、コース最頂部の真下にあたる一般通路の屋根上に設置されています。

車両を減速・停止させる制動装置には渦電流式ブレーキが使用されており、これにより摩擦ブレーキに比べて騒音が少なく、滑らかに停止できるという利点があります。

乗車中のライドフォトは、最初の巻き上げ前と、2回目のビル上昇前の2か所で撮影されます。これらの写真を合成した記念写真が乗車後に購入可能です。ただし、このサービスは主に土日祝日のみ実施されています。

車両と運用上の注意

開業当初に運行されていた車両は、黄色とオレンジ色の2編成でした。1両あたり4名が乗車できる車両が6両連結されており、1列車あたりの定員は24名でした。各車両の後列座席は、前列よりもわずかに高く配置されていました。

2023年に導入された新車両は、阪和興業によって製造されました。こちらはピンク色と黄色の2編成があり、1両あたりの定員は4名のままですが、5両編成となったため、1列車あたりの定員は20名に減少しました。全長は約13.14メートルです。

新車両は空気抵抗を低減させ、乗り心地を向上させるための流線型のデザインとなっています。安全装備としては、座席の横に透明なパネルが追加され、ヘッドレストも装備されました。安全バーは、これまでの股下から上がるタイプから、上から腰部に下ろすタイプに変更されています。また、車体にはLEDライトが搭載されており、夜間の運行時に美しく点灯します。

安全上の理由から、乗車中の落下や車輪への巻き込みを防ぐため、手荷物は全て鍵付きのロッカーに預けることが義務付けられています。また、腕時計、ブレスレット、眼鏡、衣類のポケットに入っている金属類、ズボンのベルト穴に付けたカラビナやチェーンなども外すように指示されます。ロッカーは当初、プラットホームの降車側にのみ設置されていましたが、旧車両の末期には、混雑時対応として乗り場へ上がる階段横にも追加されました。なお、旧車両の運行初期には、座席間に携帯電話や眼鏡などの小物を入れられるスペースが設けられていた時期もありました。

待ち時間を短縮して利用できる有料の「スキップパス」が、時間指定・数量限定で販売されています（アトラクション利用料金とは別料金）。

事故・トラブル

過去には、運行中のコースターから部品が落下し、地上の通行人に当たるという事故が発生しています（2010年 12月5日）。この事故で女児が軽傷を負い、アトラクションは緊急点検のため長期休止を余儀なくされました。約2年8ヶ月の改修期間を経て、2013年8月1日に運行を再開しました。

近年でも、車両が上昇中に緊急停止し、乗客が一時的にコース上に留め置かれる事案が複数回発生しています。2023年5月31日にはセンサーの誤検知による衝突防止システムの誤作動が原因で、乗客19名を乗せた車両が停止しましたが、運営側の手動操作で安全に乗客は救助され、けが人はいませんでした。同年7月31日にも、電流制御機器の不具合による過電流が原因で乗客14名を乗せた車両が緊急停止しましたが、こちらもけが人はなく、手動操作で救助されました。原因となった部品の交換を行い、8月11日に運行を再開しています。

サンダードルフィン