サンチョ2世 (ナバラ王)

サンチョ・ガルセス2世（938年頃 - 994年12月）は、10世紀後半のパンプローナ王国（後のナバラ王国）を統治した王であり、同時にアラゴン伯でもありました。父はパンプローナ王ガルシア・サンチェス1世、母はアラゴン伯ガリンド2世の娘アンドレゴト・ガリンデスです。彼の治世は、キリスト教国とイスラム勢力との関係が複雑に絡み合う時代でした。

生涯

サンチョ2世は、母方の祖父であるアラゴン伯ガリンド2世が男子の後継者を残さずに亡くなったため、母アンドレゴトを通してアラゴン伯位を継承しました。当初はフォルトゥン・ヒメネス伯の後見を受け、970年に父ガルシア1世の死後、パンプローナ王位を継承しました。

987年、サン・フアン・デ・ラ・ペーニャ修道院への寄進の際に自らを「ナバラ王」と称しており、これが「ナバラ王」の称号が用いられた最初の記録とされています。ただし、この称号が一般的に用いられるようになるのは11世紀後半のことです。

サンチョ2世の時代、王国は先代が獲得した領土を維持しましたが、後ウマイヤ朝の侵攻に直面しました。ナバラはレオン王国やカスティーリャ伯領と姻戚関係にあり、これらの国々はしばしば協力して行動しました。

文化と宗教への貢献

972年にはサン・アンドレス・デ・シルエニャ修道院を創建し、976年にはナバラ王国の文化的中心地であったアルベルダ修道院で『ヴィギラヌス写本』が完成しました。この写本は、中世スペインにおける最も重要な写本の1つであり、教会法や西ゴート法典の写本、そして西洋におけるアラビア数字の初期の表記など、貴重な情報を含んでいます。

後ウマイヤ朝との関係

976年にコルドバのカリフ、ハカム2世が亡くなると、アル・マンスールが実権を握り、キリスト教国の将来は不透明になりました。アル・マンスールの軍勢はキリスト教徒を打ち破り、サンチョ2世自身も975年にムーア人に敗北し捕虜となりました。

981年のルエダの戦いでの敗北後、サンチョ2世はコルドバへ赴き、アル・マンスールに服従し、娘を差し出すことを余儀なくされました。この関係から、後にコルドバのカリフ位を奪おうとしたアブド・アッラフマーン・サンチュエロが生まれています。989年、991年、992年にもアル・マンスールの侵攻を受け、993年には息子ゴンサロを使節として派遣し和平を強化しましたが、994年にサンチョ2世が亡くなる直前にも再び侵攻を受けています。

死と埋葬

サンチョ2世は994年に亡くなり、サン・フアン・デ・ラ・ペーニャ修道院に埋葬されました。

結婚と子女

サンチョ2世はカスティーリャ伯フェルナン・ゴンサレスの娘ウラカ・フェルナンデスと結婚し、以下の4人の子をもうけました。

ガルシア・サンチェス2世：ナバラ王、アラゴン伯
ラミロ（992年没）
ゴンサロ（997年没）：アラゴン伯領の一部を与えられた
ウラカ：アル・マンスールに嫁ぎ、アブド・アッラフマーン・サンチュエロの母となった

サンチョ・ガルセス2世は、激動の時代を生き抜き、キリスト教国とイスラム勢力の間でバランスを取りながら、ナバラ王国の存続と文化の発展に貢献した王として記憶されています。

もう一度検索