ハカム2世

ハカム2世：後ウマイヤ朝の文化と軍事を彩ったカリフ

ハカム2世（アラビア語: الحكم الثاني、Al-Hakam II、915年1月13日 - 976年10月16日）は、後ウマイヤ朝の第2代カリフ（在位：961年 - 976年）です。初代カリフ・アブド・アッラフマーン3世の子として生まれました。

生涯：文化と軍事の隆盛

カリフに即位する以前は、父であるアブド・アッラフマーン3世を補佐し、父が建設を進めていた壮麗なザフラー宮殿の造営に尽力しました。961年に父が崩御すると、後を継いでカリフに即位しました。

ハカム2世は、類まれなる文化人、教養人として知られています。東方へ多数の使者を派遣し、貴重な図書の収集に力を注ぎました。その収集された図書の数は膨大で、目録だけでも44巻に達し、蔵書数は40万巻から60万巻近くにも及んだと言われています。彼はこれらの蔵書を収めるために巨大な図書館を創設し、自ら蔵書の一冊一冊に注釈を書き込むほどの熱心さを示しました。図書館の充実ぶりは目を見張るものがあり、後ウマイヤ朝の文化水準の高さを物語っています。

政務に関しては、宰相のジャアファル・イブン・ウスマーン・アル＝ムスハフィーに任せることが多かったとされています。しかし、ハカム2世が無能であったわけではありません。彼は、自らの興味や才能を文化的な活動に注ぎ込んだのです。その文化的功績は非常に大きく、後のスペイン、そして西欧近代文明の発展に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

軍事面においても、ハカム2世の治世は目覚ましい成果を上げました。973年、将軍のガーリブ・イブン・アブド・アッ＝ラフマン・アン＝ナースィリーに軍を率いさせ、ファーティマ朝の領土であったマグリブを奪取することに成功しました。さらに975年、ガーリブを総司令官とする軍勢をヨーロッパに向けて進軍させ、キリスト教国に対するイスラム勢力のイベリア半島における優位を確立しました。これらの軍事的成功によって、後ウマイヤ朝は政治的にも経済的にも安定し、ハカム2世の治世は後ウマイヤ朝の全盛期を築き上げました。

976年、ハカム2世は61歳でその生涯を閉じました。彼の死後、後ウマイヤ朝は徐々に衰退の道をたどることになります。

人となり

ハカム2世は、胴長短足の肥満体であったという記録が残っています。しかし、その外見からは想像もできないほどの知性と教養、そして文化への情熱を持ち合わせていました。彼の文化的功績は、後ウマイヤ朝、ひいてはヨーロッパの歴史において特筆すべきものと言えるでしょう。

参考文献

佐藤健太郎 「第3章 イスラーム期のスペイン」『スペイン史 1 : 古代 - 近世』 関哲行、立石博高、中塚次郎編、山川出版社、<世界歴史大系>、2008年、pp.70-135 ISBN 978-4-634-46204-5

関連項目

後ウマイヤ朝

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