サン・ガッロの受胎告知

アンドレア・デル・サルト作「サン・ガッロの受胎告知」

「サン・ガッロの受胎告知」（伊: Annunciazione di San Gallo）は、盛期ルネサンスを代表する画家アンドレア・デル・サルトが1513年から1514年頃に制作した油彩画です。板に描かれたこの作品は、現在フィレンツェのパラティーナ美術館に所蔵されており、彼の初期の傑作として知られています。

作品の背景

この作品は、元々フィレンツェのアウグスティヌス会派のサン・ガッロ修道院・教会のために描かれた三連祭壇画の中央を飾る作品でした。両側には『ノリ・メ・タンゲレ』と『三位一体の論議』が配置されていました。しかし、1531年にカール5世の軍隊によって修道院が破壊され、所有品は別の場所に移されました。その後、修道院は再建されましたが、1557年の洪水により、所蔵されていた絵画の約三分の一が水没し、プレデッラ（祭壇画の下部に置かれる装飾板）も失われたと考えられています。

プレデッラについては、一部が現存し、アイルランド国立美術館とウォリック城に分蔵されているという説がありますが、確証は得られていません。

様式と影響

本作は、フラ・バルトロメオやサン・マルコ修道院派の影響を受けており、特に人物像の記念碑的な表現にその影響が見られます。また、色彩表現にはレオナルド・ダ・ヴィンチの影響が強く、構図の自由さにはピエロ・ディ・コジモの影響が見られます。これらの画家たちの影響を受けつつ、アンドレア・デル・サルト独自の様式が確立されているのが特徴です。

背景に描かれた人物像の解釈

背景のバルコニーに描かれた人物像については、様々な解釈がなされてきました。1985年には、スザンナと長老であるという説が提唱されました。しかし、1968年にはダヴィデとバトシェバであるという説も発表されています。さらに、1989年にはアウグスティヌスの聖書釈義に関連して、アダムとイブであるという説も提唱されました。これらの異なる解釈は、作品に深みを与え、鑑賞者の想像力を掻き立てます。

まとめ

「サン・ガッロの受胎告知」は、アンドレア・デル・サルトの才能が発揮された作品であり、ルネサンス美術の重要な一例です。その美しい構図、繊細な色彩、そして背景に秘められた物語は、見る者を魅了し続けます。現在、フィレンツェのパラティーナ美術館でその美しさを堪能することができます。作品を鑑賞する際には、人物像の解釈にも注目すると、より深く作品を理解できるでしょう。

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