サン・シティ (曲)

サン・シティ：アパルトヘイトに抗議した伝説の楽曲

「サン・シティ」は、リトル・スティーヴンことスティーヴ・ヴァン・ザントが中心となり、1985年に発表された楽曲です。この曲は、南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策を強く批判しており、同国にあった白人専用リゾート「サン・シティ」をタイトルに冠しています。

制作の背景

ヴァン・ザントは、ピーター・ガブリエルの楽曲「ビコ」に感銘を受け、当初は自身のソロアルバムのために「サン・シティ」を書き始めました。当時、国際連合が南アフリカへのボイコットを呼びかける中、アメリカの著名なミュージシャンが高額な報酬を目当てにサン・シティで演奏することが問題視されていました。ヴァン・ザントは、そのようなミュージシャンを名指しで批判することも考えていたといいます。

オールスターが集結

楽曲の発表にあたり、ヴァン・ザントはバンド・エイドやUSAフォー・アフリカの成功事例を参考に、オールスター参加型のシングルとしてリリースすることを決意しました。彼の呼びかけに応じ、ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ゲルドフをはじめ、ロック、ジャズ、ヒップホップ、レゲエ、アフリカ音楽など、多様なジャンルのミュージシャンが集結しました。

しかし、歌詞の中で他のミュージシャンを名指しで攻撃することに対し、一部の参加アーティストやレコード会社が難色を示したため、その部分はカットされました。

楽曲の内容と制作

完成した歌詞では、黒人がバントゥースタン（ホームランド）へ強制移住させられている問題や、黒人に選挙権が認められていない問題などに触れ、「サン・シティでは演奏するものか！」というメッセージを強く訴えています。ヴァン・ザントとアーサー・ベイカーの共同プロデュースにより、この曲は完成しました。

また、ヴァン・ザントはイントロにマイルス・デイヴィスの演奏を数秒間入れようとしましたが、デイヴィスが7分間も演奏したため、ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムス、ロン・カーターと共にジャズ・ヴァージョンを制作し、「The Struggle Continues」という曲名でアルバムに収録しました。

収益の寄付

本シングルの収益は、公益信託「The Africa Fund」に寄付され、アパルトヘイトと闘う人々への支援に役立てられました。

各国での反響

ヨーロッパでは、オランダのシングル・チャートで3週連続4位を記録するなど、多くの国でトップ10入りを果たしました。しかし、アメリカではMTVでミュージック・ビデオがヒットしたものの、ラジオでのオンエアが伸び悩み、チャートも最高38位にとどまりました。これは、メッセージ性の強い内容がラジオ局に敬遠されたことや、当時の全米トップ40のフォーマットに合わないラップが含まれていたことが原因と考えられています。

ヴァン・ザント自身も、「典型的なヒット・シングルの手法を取ったレコードではない」と語っています。

2010年には、『タイム』誌が選出した「トップ10プロテスト・ソング」の一つに選ばれました。

ミュージック・ビデオ

ミュージック・ビデオは、ケヴィン・ゴドレイ、ロル・クレーム、ジョナサン・デミ、ハート・ペリーの4人が監督を務めました。アメリカのラジオ局ではヒットしなかったものの、ミュージック・ビデオがMTVなどで盛んに放送されたことで、人々の意識が高まり、レコードの売り上げも増加しました。

ミュージック・ビデオは、グラミー賞最優秀長編ミュージック・ビデオ賞にノミネートされています。

「サン・シティ」は、音楽の力を通じて社会問題に警鐘を鳴らし、世界中の人々に影響を与えた重要な作品です。

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