サン・マロ襲撃 (1693年)

サン・マロ襲撃の概要

1693年11月26日から29日の間、イングランド王国の海軍はフランスのブルターニュ地方に位置する港町サン・マロに対して襲撃を敢行しました。この事件は大同盟戦争の一環であり、大砲と火薬を積んだ「悪魔の機械」と称される火船を用いるという前代未聞の攻撃が繰り広げられました。作戦は失敗に終わったものの、サン・マロに対しては甚大な物的被害を引き起こしましたが、人的被害は幸運にもゼロでした。

背景

1693年、オラニエ公ウィリアム3世が率いるアウクスブルク同盟とフランス王国との戦争は5年目を迎えていました。前年度にはフランス海軍が連続しての敗北を喫したものの、ラゴスの海戦での雪辱を果たすなど、戦局は常に流動的でした。しかし、フランスは次第に通商破壊策へと転換し、サン・マロは「私掠船都市」として知られ、イングランドの商船に対する攻撃が続いていました。

フランス側のルイ14世は、サン・マロを攻撃から守るために、技術将校ヴォーバンに防御の強化を命じました。サン・マロの防衛は大砲を配置するなどして著しく向上しました。一方、イングランド側ではサン・マロを壊滅させる計画が立てられ、ウィリアム3世の指導の下、秘密兵器「悪魔の機械」が設計されました。この火船は火薬とぶどう弾を大量に積載し、遠くの港に接近できるように設計されていました。

英蘭連合艦隊の攻撃

1693年11月26日、英蘭連合艦隊がサン・マロ沖に姿を現しました。艦隊は比較的大型の戦艦やフリゲート艦から成るもので、ここでの砲撃はサン・マロ市に対する初期の攻撃にあたりました。攻撃は初めての試みではなく、過去の私掠船に同様の被害を与えるためのものでした。最初の2日間は比較的活発に行動しましたが、フランス側の防衛も堅固で、成果はなかなか上がりませんでした。

11月27日、イングランドは未完成のラ・コンシェ砦を占拠し、そこからの砲撃が続けられましたが、戦局は予測通りには進展しませんでした。また、連合艦隊がフレエル岬での交戦中に、フランスの私掠船を拿捕しようと試みた際、逆に逃げられる場面もありました。

「悪魔の機械」の運命

29日、ついに「悪魔の機械」が投入されました。目標はサン・マロ内の火薬庫とされ、城壁に接近する設計でしたが、突風によって座礁する運命に見舞われました。この結果、大爆発が発生し、周辺地域に甚大な物的損害をもたらしました。然而、奇跡的にフランス側には人的被害がなく、誤って傷を負ったのはわずかに生き物だけでした。

影響

サン・マロ襲撃は当初の計画は失敗に終わったものの、物的被害の面では大きな影響を持ちました。英蘭連合艦隊は戦局を不利に保ちながらも、ラ・コンシェ砦を押さえ、その資源を多くを奪うことに成功しました。この結果、サン・マロ周辺では新たな防衛策や支援体制が強化されることとなりました。

この襲撃に関連した一つの伝説として、サン・マロの「舞う猫の通り」が名付けられました。これは襲撃において火船が爆発した際、誰も負傷せずに済んだことに起因していると言われています。イングランド側には若干の死傷者が出ましたが、サン・マロの住民は無事でした。サン・マロという街の防御力の強さが、人的被害を抑え込んだ大きな要因であったのかもしれません。

このように、サン・マロ襲撃は歴史の中では短い出来事の一つでありましたが、その影響は後の軍事戦略にまで波及することとなり、この地域の海戦史を飾る一幕となりました。

もう一度検索