サン＝カンタン

サン・カンタン：歴史と文化が交差するフランス北部の都市

サン・カンタンは、フランス北部のオー＝ド＝フランス地域圏エーヌ県に位置する都市です。県庁所在地のランをしのぐ人口を擁し、エーヌ県最大の都市として知られています。その名は、3世紀に殉教した聖カンタン（クィンティヌス）に由来します。

戦略的要衝としての歴史

サン・カンタンは、12世紀にフランス王国の直轄領となり、王国の北端という戦略的に重要な位置を占めるようになりました。百年戦争では大きな被害を受け、15世紀後半には一時的にブルゴーニュ公国の支配下に入るなど、その歴史は常に動乱に彩られてきました。

1557年には、ヨーロッパ大陸の覇権を争うフランスとスペインがサン・カンタンで激突しました。オランダから侵攻したスペイン軍は当初優勢でしたが、サン・カンタンの陥落には約1ヶ月を要しました。苦戦の末、スペイン国王フェリペ2世はパリへの進軍を断念し、1559年のカトー・カンブレジ条約によって戦争は終結しました。フェリペ2世は、サン・カンタンでの勝利を記念し、戦没者への慰霊のため、マドリード近郊にエル・エスコリアル修道院の建設を命じました。

17世紀後半、フランス国王ルイ14世による北方への積極的な領土拡大政策により、サン・カンタンは国境付近の拠点としての役割を失い、19世紀初頭には城壁が解体されました。しかし、1870年から1871年にかけての普仏戦争では2度も戦場となり、第一次世界大戦においては西部戦線に位置し、消耗戦の被害をまともに受けることとなりました。バジリカは部分的に破壊され、旧市街はほぼ完全に廃墟と化しました。

多様な文化遺産

サン・カンタンには、その歴史を物語る数々の文化遺産が残されています。

バジリカ

サン・カンタンの名の由来となった聖カンタンの遺骨は、市中心部のバジリカに安置されています。13世紀、聖遺物を目指す巡礼者が増加したため、バジリカの建設が始まりました。しかし、財政難などの問題により建設が2世紀以上遅れた結果、バジリカには様々な時代のゴシック様式が取り入れられ、ルネサンス初期の要素も見られます。

アール・デコ建築

第一次世界大戦後の復興期には、当時流行していたアール・デコ様式の建築が数多く建てられました。現在、サン・カンタンには3000を超えるアール・デコ建築が現存しています。これらの建築物は、サン・カンタンの街並みに独特の景観を添えています。

博物館・美術館

蝶の博物館: 60万点を超える昆虫標本を収蔵し、常時2万点を展示しています。
アントワーヌ・ルキュイエ美術館: サン・カンタン出身の画家、モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールの肖像画が数多く展示されています。

国際的な繋がり

サン・カンタンは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

カイザースラウテルン（ドイツ）
ラザーハム（イギリス）
サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル（スペイン）

サン・カンタン出身の著名人

フランソワ・ノエル・バブーフ（革命家、思想家）
* ルディ・ゴベア（バスケットボール選手）

サン・カンタンは、その長い歴史の中で幾度となく戦火に見舞われながらも、不屈の精神で復興を遂げてきました。現在では、多様な文化遺産が息づく魅力的な都市として、多くの観光客を惹きつけています。

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