サートゥルヌス神殿

サートゥルヌス神殿は、ローマ神話に登場する農耕神サートゥルヌスを祀るために、古代ローマのフォロ・ロマーノ西端に建てられた神殿です。現在では、その大部分が崩壊してしまっていますが、正面のポルティコ部分を構成していた8本の柱と、ペディメントの一部が残っており、往時の姿を偲ぶことができます。

考古学的特徴

残存しているペディメントには「Senatus Populusque Romanus incendio consumptum restituit」という碑文が刻まれており、これは「元老院とローマ市民が火災で失われたものを復元した」という意味を示しています。この碑文から、神殿が過去に火災で被害を受け、その後修復されたことがわかります。

歴史

神殿の創建については、いくつかの説があります。一部の文献では、王政ローマ最後の王タルクィニウス・スペルブスが建設したとされ、別の文献では、ティトゥス・ラルキウス・フラウスが建設者であるとされています。また、紀元前4世紀初頭には、ガリア人による放火（ブレンヌスによるローマ侵略）によって被害を受け、その後修復された記録も残っています。

共和政ローマ時代には、この神殿は「アエラリウム」つまり国庫として使用され、国の財産が保管されていました。神殿は、カンピドリオの丘へと続く古い坂道、クリヴス・カピトリヌスの起点に位置していました。現在の遺跡は、3代目のサートゥルヌス神殿であり、2代目の神殿は283年に火災で焼失しました。

内部構造と用途

文献によると、神殿内部にはベールで覆われ、大鎌を持ったサートゥルヌスの木像が安置されていました。この木像の足には亜麻布が巻かれており、年に一度、サートゥルナーリア祭の時だけ解かれたと伝えられています。

サートゥルヌス神殿は、神を祀る場所であると同時に、共和政ローマの宝物庫、アエラリウムとしての役割を担っていました。ここでは、国家が保有する金や銀などの財宝が保管され、また、国家の公文書や、度量衡の基準となる金属製の原器も収められていました。その後、アエラリウムは別の建物に移され、公文書は近くのタブラリウム（公文書館）に移されました。神殿の土台は、コンクリートをトラバーチンで覆ったもので、当時の建築技術を知る上で貴重な手がかりとなっています。また、神殿の壁面はビラ貼りの場所としても使われていたことがわかっています。

サートゥルヌス神殿は、その長い歴史の中で、様々な役割を果たしてきました。神殿として、また国庫として、古代ローマの歴史と文化を今に伝える貴重な遺跡です。

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