ブレンヌス

ブレンヌス：古代ローマを震撼させたガリアの戦士

ブレンヌス（Brennus または Brennos）は、古代ローマを脅かしたガリア人の族長として歴史に名を残しています。彼の名は、単なる個人名ではなく、ケルト神話の神に由来する称号であった可能性も指摘されています。

ローマ侵略

紀元前387年、ブレンヌスはセノネス族を中心とするガリア軍を率いてローマに侵攻しました。アッリアの戦いでローマ軍を打ち破り、ローマ市を占領。ローマは徹底的に破壊され、市民は屈辱を味わいました。唯一、カンピドリアの丘だけは抵抗を続け、占領を免れました。

身代金交渉と「Vae victis!」

ローマは、ブレンヌスに黄金1000ポンド（約327kg）という莫大な身代金を支払い、占領から逃れようとしました。しかし、その重さを量る際に不正がないかとローマ側が異議を唱えたところ、ブレンヌスは天秤に剣を投げ入れ、「Vae victis!（征服された者に災いあれ！）」と叫んだと伝えられています。この言葉は、敗者には一切の権利がないことを意味し、彼の傲慢さとローマに対する侮蔑を表しています。

カミルスの登場とガリア軍の敗北

身代金の交渉が難航している最中、追放されていたローマの英雄マルクス・フリウス・カミルスが軍を率いて現れました。カミルスは身代金の支払いを拒否し、ガリア軍との戦いを開始。ローマ市内からガリア軍を追い払い、さらに市外でも打ち破りました。カミルスは、この功績により「ローマ第二の建国者」として讃えられました。

ブレンヌスの正体

ブレンヌスという名前は、紀元前3世紀にもマケドニアとギリシア北部を侵略したガリア人のリーダーに使用されています。このことから、ブレンヌスは個人名ではなく、族長や指導者の称号であったという説が有力です。

ブレンヌスとディオニュシオス1世

シラクサの僭主ディオニュシオス1世が、ブレンヌスと協力関係にあったという説も存在します。ディオニュシオス1世は、ローマと関係の深いメッシーナを狙い、ブレンヌスがローマを牽制している間に攻撃を仕掛けようとしました。しかし、この試みは失敗に終わりました。

後世への影響

ブレンヌスのローマ侵略は、ローマ人にとって忘れられない屈辱的な出来事として記憶されました。しかし、この危機を乗り越えたことで、ローマは結束を固め、さらなる発展を遂げることになります。ブレンヌスの名は、征服者の象徴として、また「Vae victis!」の言葉とともに、後世に語り継がれています。

ポール・ジャマンによって描かれた絵画『Le Brenn et sa part de butin』（1893年）は、ブレンヌスがローマから略奪した戦利品を見下ろす姿を描いており、彼の強大さと征服の残酷さを表しています。

ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王史』に登場するブレニアスは、ブレンヌスをモデルにしたと考えられています。

参考文献

シケリアのディオドロス『歴史叢書』 14.113-117
プルタルコス『対比列伝』「カミヌス」 15-30
ポリュビオス『歴史』 2.18
ハリカルナッソスのディオニュシオス『ローマ古代誌』 13.6-12

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