ザイフリボク

ザイフリボク（采振木）：春を告げる白い花と秋の実り

ザイフリボク（学名: Amelanchier asiatica）は、バラ科に属する落葉広葉樹です。別名シデザクラとも呼ばれ、日本と朝鮮半島に分布しています。日本では、本州中南部から四国、九州にかけての山地に自生し、春の訪れを告げる美しい花を咲かせ、秋には黒紫色の実を実らせます。

名前と由来

ザイフリボクの名前は、白い花が武士が戦場で指揮を執る際に用いた采配に似ていることに由来します。「采を振る」様子から「采振木」と名付けられました。また、別名のシデザクラは、花弁の形をしめ縄につける四手に見立てたものです。中国では「東亞唐棣」と呼ばれています。

特徴

ザイフリボクは、高さ約10メートルの小高木で、幼木は灌木状になります。樹皮は淡灰褐色で、縦筋があるものとないものがあります。一年枝は細く紅紫色で、皮目が多いのが特徴です。葉は互生し、長さ4～9cmの長楕円形または楕円形で、葉の先端は尖っています。葉の縁には鋸歯があり、若葉の裏側には白い綿毛が密生しています。

花期は4月から5月で、枝先に白い花を密集して咲かせます。花弁は5枚で、長さは10～15mmの線形です。雄しべは20本あり、雌しべの花柱は5本で中央部まで合着しています。秋には直径約6mmの球形の果実が実り、熟すと黒紫色になり、粉白色を帯びます。

冬芽は長楕円形で紅紫色をしており、5～9枚の芽鱗に包まれています。芽鱗の縁は白い毛で縁取られています。葉痕は三日月形で、維管束痕が3個見られます。

生育環境

ザイフリボクは寒さに強く、萌芽性があり、土地を選ばずに育ちます。やや湿った場所を好む性質があります。

利用

ザイフリボクは、庭木や公園木として利用されます。また、近縁種であるアメリカザイフリボク（ジューンベリー）は、食用として果実が利用されています。赤く熟した果実は甘酸っぱく、ジャムや果実酒などに加工されます。

ザイフリボクは、春の白い花、秋の黒紫色の実と、四季折々の変化を楽しめる樹木です。庭に植えれば、自然の趣を感じさせてくれるでしょう。

もう一度検索