ザウエル&ゾーンM30ルフトヴァッフェ・ドリリング

ザウエル&ゾーンM30ルフトヴァッフェ・ドリリングは、第二次世界大戦中にドイツ空軍のパイロットに支給された、ユニークな経緯を持つ複合銃です。「ルフトヴァッフェ」はドイツ空軍、「ドリリング」は三重を意味し、その名の通り3本の銃身を備えています。これは、単なる武器ではなく、戦場での生存をかけたパイロットたちの命綱でした。

開発と背景
M30は元々、1930年代から狩猟用として一般に販売されていました。しかし、戦況の悪化に伴い、ドイツ空軍はパイロットの自衛手段として、この銃に目を付けます。1941年から1942年にかけて、軍用向けの改良型が生産されました。民生用モデルと同様の高品質な仕上げが施されたため、非常に高価な銃となりました。

特徴
M30ルフトヴァッフェ・ドリリングの最大の特徴は、1挺で複数の用途に対応できる点です。2本の12ゲージ散弾銃身は、近距離での自衛や鳥獣の狩猟に適しています。中央に配置された9.3x74mmRライフル銃身は、より大型の動物を仕留めることが可能です。これにより、砂漠や森林といった多様な環境下で、パイロットは食料を調達し、身を守ることができました。

運用と展開
M30は、分解された状態で、弾薬とともに専用のアルミニウム製ケースに収納され、航空機に搭載されました。ケースには9.3x74mmR弾20発と12ゲージ散弾20発が収められ、総重量は約14.5kg。航空機が不時着した場合、パイロットはケースごと機外へ持ち出し、サバイバルキットとして活用しました。特に、北アフリカ戦線で活動する航空隊員にとって、M30は砂漠での生存を支える重要な装備でした。

希少性と価値
M30ルフトヴァッフェ・ドリリングの総生産数は、わずか約2,500挺。その希少性から、現在ではコレクターの間で非常に高い人気を誇り、数千ドルから数万ドルの高値で取引されることもあります。第二次世界大戦という激動の時代に、パイロットの命を繋いだM30は、単なる銃器を超えた歴史的価値を持つ存在と言えるでしょう。

関連
TP-82'>TP-82 - ソビエト連邦の宇宙飛行士がサバイバル用として携行していた三銃身火器。

外部リンク
Sauer & Sohn M30 Drilling (Brazilian web site, with photos)
* “Luftwaffe Drilling and US M6 Survival Rifle at RIA”

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