ザウテルヘビ

ザウテルヘビ（Hebius sauteri）

ザウテルヘビは、ヘビの仲間でナミヘビ科のヒバカリ属に分類される種です。学名は Hebius sauteri といい、種小名の sauteri は人名への献名に由来し、これが和名の語源ともなっています。

分布

このヘビはアジア東部に広く生息しています。具体的には、台湾、中国の広範な地域（重慶市、安徽省、雲南省、海南省、広東省、貴州省、江西省、湖南省、湖北省、四川省、福建省、広西チワン族自治区、香港など）、そしてベトナムで見られます。特に台湾の高雄市甲仙区（かつて甲仙埔と呼ばれた地）は、この種の存在が初めて確認され、学術的に基準とされる標本が採集された「模式産地」として知られています。英名「Kosempo snake」はこの地名にちなんでいます。

形態

成体のザウテルヘビは、最大で全長約76センチメートルに達します。体の特徴として、胴体の中央部分で斜めに並ぶ背中の鱗の数（体列鱗数）は15枚です。お腹側にある幅の広い鱗（腹板）の数は約130枚、そして総排泄孔より後ろの尾の部分の鱗（尾下板）は左右にそれぞれ78枚あります。

体色は主に茶褐色や赤褐色をしており、その上に黒い斑点が散りばめられています。さらに、体側面には鮮やかな赤い斑点が一列に並んでいるのが特徴的です。お腹側の鱗は薄い黄色で、その両端には黒褐色の斑紋が入っています。口角から首にかけては白い模様が見られます。目の虹彩は橙色をしています。

生まれたばかりの幼蛇は非常に小さく、全長はおよそ10センチメートルほどです。

分類

ヒバカリ属の中では、日本などにも生息するヒバカリ（H. vibakari）やミヤジマヒバァ（H. miyajimae）といった種に近縁であると考えられています。特にヒバカリとは外見が非常に似ており、過去には正式に記載される前のダンジョヒバカリがザウテルヘビと誤認されたこともありました。

生態

ザウテルヘビは、標高が1200メートル以下の比較的低い場所にある森林や農耕地などに生息しています。特に、林床にある水たまりの周辺や渓流の近くなど、やや湿り気のある環境を好む傾向があります。主に夜明け前や日没後といった薄暗い時間帯に活動的になります。水中に入るのを好み、泳ぎも得意です。

食性は動物食であり、様々な小動物を食べます。主な餌としては、カエルやその幼生であるオタマジャクシ、魚類、ミミズなどが挙げられます。

繁殖は卵生です。繁殖期にあたる5月から6月にかけて、一度に5個程度の卵を産みます。産み落とされた卵は、およそ40日ほどの期間を経て孵化し、幼蛇が誕生します。

人間との関わり

ザウテルヘビの学名の種小名「sauteri」は、ハンス・ザウテル（Hans Sauter）という人物への献名として付けられました。この献名がそのまま和名「ザウテルヘビ」の由来となっています。

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参考文献

クリス・マティソン 著, 千石正一 監訳 『ヘビ大図鑑』 緑書房, 2000年, 153頁.

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