ザウディトゥ

ザウディトゥ女帝

ザウディトゥ（Zaoditou）は、1876年4月29日に誕生し、1930年4月2日に逝去した、エチオピア帝国の歴史において重要な役割を果たした女性です。彼女は、エチオピア近代化の礎を築いた偉大な皇帝、メネリク2世の皇女として生まれました。その生涯は、帝国の激動期と重なります。

即位までの経緯

ザウディトゥが歴史の表舞台に立つのは、1916年の政変がきっかけでした。当時の皇帝は、彼女の甥にあたるイヤス5世（リジ・イヤスとしても知られています）でした。イヤス5世は、そのイスラム教への接近などが国内の反発を招き、権力を失うことになります。この皇帝廃位という事態を受けて、メネリク2世の直系の皇女であったザウディトゥが、新たな国のリーダーとして担ぎ上げられることとなりました。

1916年、イヤス5世が退位させられた後、ザウディトゥは名実ともに国家の最高権力者としての地位に就きました。当初は実質的な統治者として国の舵を取り始めましたが、翌年の1917年には、正式にエチオピア帝国の女帝として即位式を挙げ、その地位を確固たるものにしました。これにより、長きにわたるエチオピア帝国の歴史において、女性が皇帝の座に就くという、極めて異例の時代が幕を開けたのです。

摂政との共同統治

ザウディトゥ女帝の治世における最も特徴的な点は、摂政との共同統治体制であったことです。女帝は、遠縁にあたるラス・タファリ・マコンネンを摂政兼皇太子に任命しました。この人物こそが、後にエチオピア帝国最後の皇帝として世界的に知られることになる、ハイレ・セラシエ1世その人です。

ラス・タファリ・マコンネンは非常に有能であり、また近代化を推進する意欲に溢れた人物でした。摂政に就任すると、彼はすぐに政治の実権を握り、国政の運営を担うことになります。女帝ザウディトゥが伝統的な価値観を重んじる傾向があったのに対し、摂政ラス・タファリは、エチオピアを国際社会の中で孤立させないため、様々な改革を断行しようとしました。このため、女帝と摂政の間には、時として意見の対立も見られたと言われています。

政治からの引退と死去

女帝ザウディトゥは、名目上の国家元首であり続けましたが、政治の実際の執行は摂政ラス・タファリに委ねられることが多くなりました。そして、即位から12年が経過した1928年、ザウディトゥ女帝は政治の第一線から身を引くことを決断します。これは、摂政ラス・タファリへの権力委譲を決定づけるものであり、彼が名実ともにエチオピアの指導者としての地位を固める一歩となりました。

政治の表舞台から退いた後も、ザウディトゥは女帝としての敬意を払われましたが、国政における影響力は大きく低下しました。そして、1930年4月2日、ザウディトゥ女帝は53歳でその生涯を閉じました。彼女の死去に伴い、長らく摂政を務めていたラス・タファリ・マコンネンが皇帝として即位し、ハイレ・セラシエ1世としての統治が始まることになります。

ザウディトゥ女帝の治世は、エチオピアが伝統的な社会から近代国家へと移行していく過渡期にあたり、摂政ラス・タファリによる改革が本格的に始まった時代として記憶されています。彼女自身は、皇帝メネリク2世の血筋を引く者として、国の安定と正統性の象徴としての役割を担いました。

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