ザクスピード・841

ザクスピード・841：F1挑戦の軌跡

1985年、F1の世界に突如として現れたザクスピードチーム。その挑戦を象徴するマシンが、ザクスピード・841です。本稿では、このマシンが秘めた技術、F1参戦への道のり、そしてその戦績について詳細に解説します。

ポール・ブラウンとザクスピードの野望

ザクスピード・841は、元シェブロン・カーズのデザイナー、ポール・ブラウンの手によって設計されました。ザクスピードにとって初のF1マシンである841は、チームのF1挑戦における大きな期待を背負っていました。1500ccの直列4気筒ターボエンジンは、ザクスピード自身の手によって開発されたもので、その性能はチームの技術力の高さを示すものだったと言えるでしょう。

堅牢なモノコックと開発の遅延

マシンのモノコックは、軽量かつ高剛性を実現するため、アルミハニカムとカーボン/ケブラー複合材という当時としては先進的な素材で構成されました。1984年のニュルブルクリンクでのF1世界選手権デビューを目指していましたが、ドイツの鉄鋼労働者ストライキの影響により、十分なテストを行うことができず、デビューは翌1985年へと延期されました。この開発遅延は、チームにとって大きな痛手となったのは言うまでもありません。

2台のシャーシとドライバー交代劇

841は2台のシャーシが製作されました。1号車は1984年5月から6月にかけて製作され、同年9月の車両公開後、1985年シーズンのレースに使用されました。2号車は1985年フランスグランプリで初投入され、以降1号車はスペアカーとして使用されました。

ドライバーは、当初ジョナサン・パーマーが起用されました。しかし、スパ1000kmレースのプラクティスでの負傷により、翌週のイタリアグランプリを欠場。シーズン後半はクリスチャン・ダナーがドライバーを務めることとなります。ヨーロッパラウンド11戦のうち、パーマーの負傷による欠場により10戦に出場しました。

モナコでの輝きと厳しい現実

厳しい戦いが続いた1985年シーズンにおいて、ザクスピード・841が唯一完走を果たしたのは、第4戦モナコグランプリでした。このレースでパーマーは11位という結果を残し、チームにとって貴重なポイント獲得の機会となりました。しかし、他のレースでは完走することができず、F1の過酷な現実を突きつけられることとなりました。

まとめ：F1挑戦の足跡

ザクスピード・841は、ザクスピードチームのF1挑戦を象徴するマシンです。完走はわずか1回と厳しい結果に終わりましたが、その挑戦はF1の歴史に小さな足跡を残しました。自社開発エンジン搭載や、先進的な素材の採用など、チームの技術力とF1への強い意志を示すマシンであったと言えるでしょう。そして、この経験は、後のザクスピードの活動においても重要な役割を果たしたことは間違いありません。ザクスピード・841は、F1という舞台に挑んだ小さなチームの、大きな夢と努力の証なのです。

もう一度検索