ザバロン

ザバロン：アイルランドが生んだ英国の英雄、そして偉大な血統の祖

ザバロン(The Baron、1842年-？)は、19世紀半ばの競馬界を彩った、アイルランド出身の競走馬にして、後に名種牡馬としての地位を確立したサラブレッドです。父系もアイルランドにルーツを持ち、その血統は後の英国競馬に大きな影響を与えることになります。

アイルランドで生まれ育ったザバロンは、1845年、敏腕調教師ジョン・スコットに見出され、イギリスへと渡ります。スコットは、やや太り気味ではあったものの、ザバロンの潜在能力を見抜き、厳しいトレーニングを施しました。その結果、ザバロンはイギリスの競馬界で頭角を現し、シザレウィッチステークス、そして名門レースであるセントレジャーステークスを制覇するという快挙を成し遂げます。これは、アイルランド産の競走馬の能力の高さを示す大きな証拠となりました。しかし、過酷な調教はザバロンの体格を変化させ、痩せ細り、気性が荒くなるという結果も招きました。

競走馬としての輝かしいキャリアを終えると、ザバロンはテオバルドに売却され、ストックウェル牧場で繋養されました。短い期間ではありましたが、ここでザバロンは当時まだ無名だった牝馬ポカホンタスと交配。この組み合わせは奇跡的な結果を生み出し、後の競馬界に大きな影響を与える名馬、ストックウェルとラタプランが誕生しました。

1850年、テオバルドの死後、まだストックウェルやラタプランがデビューする前であったこともあり、ザバロンは低価格でフランスへと輸出されました。しかし、フランスでもザバロンの種牡馬としての成功は続き、ディアヌ賞（フランスオークス）優勝馬を3頭、バーデン大賞優勝馬を2頭輩出するなど、その能力は国境を越えて高く評価されました。

ザバロンの産駒たちは、それぞれの競走馬として優れた成績を収め、その中には、2000ギニー、セントレジャーステークスを制覇し、7回もの英リーディングサイアーに輝いた、伝説的な種牡馬ストックウェルが含まれます。このストックウェルは、数多くの名馬を輩出し、現代競馬の血統にも大きな影響を与え続けています。他にも、生涯71戦42勝を記録したラタプランや、ジョッケクルブ賞、ディアヌ賞、バーデン大賞、プランスアンペリアル賞とフランスの主要レースを制したラトゥーケなど、錚々たるメンバーが名を連ねています。これらの活躍は、ザバロンの遺伝子の素晴らしさを証明するものです。

ザバロンは、競走馬として、そして種牡馬として、イギリスとフランスの競馬界に計り知れない貢献をしました。アイルランドで生まれ育ち、イギリスで成功を収め、フランスでもその能力を発揮したその生涯は、まさに国際的なサラブレッドの輝かしい軌跡と言えるでしょう。その名は、競馬史に永遠に刻まれることでしょう。

主な勝ち鞍:

セントレジャーステークス
シザレウィッチステークス
マドリードステークス
カーワンステークス
ウォーターフォードステークス
2着 - クレーブンステークス

主な産駒:

ストックウェル (Stockwell): 2000ギニー、セントレジャーステークス優勝。7回英リーディングサイアー
ラタプラン (Rataplan): 生涯成績71戦42勝
ラトゥーケ (La Toucques): ジョッケクルブ賞、ディアヌ賞、バーデン大賞、プランスアンペリアル賞優勝
イサベラ (Isabella): プール・デッセ優勝
エトワールデュノール (Etoile de Nord): ディアヌ賞優勝
ダムドヌール (Dame d'Honneur): ディアヌ賞優勝
バロネラ (Baronella): プール・デッセ優勝
ラマラデッタ (La Maladetta): バーデン大賞優勝

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