ザ・クリミナル 合衆国の陰謀

『ザ・クリミナル　合衆国の陰謀』（原題：Nothing But the Truth）は、2008年に制作されたアメリカ合衆国の社会派ドラマ映画です。監督はロッド・ルーリー、ケイト・ベッキンセイルとマット・ディロンら豪華キャストが出演しています。2003年にアメリカで発生した実際の出来事、“プレイム事件”を基に創作された本作は、情報源の秘密保持という信念を貫き、国家権力と対立する女性記者の姿を描いています。モデルとなったのは『ニューヨーク・タイムズ』の記者、ジュディス・ミラーです。

しかし、映画の内容は実際のプレイム事件とはいくつかの点で異なっています。プレイム事件では、CIAスパイの情報漏洩が合衆国政府主導で行われたため、「CIAスパイ 対 合衆国政府」という構図でしたが、本作では女性記者が独自に機密情報を取得し、「女性記者 対 合衆国政府」という構図になっています。この点において、映画は事件を脚色し、ドラマ性を高めていると言えるでしょう。

映画のストーリーは、アメリカ大統領暗殺未遂事件から始まります。政府はベネズエラ政府の陰謀として報復攻撃を開始しようとする中、『サンタイムズ』紙の女性記者レイチェルは、ベネズエラの関与を否定する報告書の存在にもかかわらず、政府がそれを隠蔽している事実を掴み、記事にします。この大スクープは大きな反響を呼びますが、レイチェルは政府からの情報開示請求を拒否したため、法廷侮辱罪で投獄されてしまいます。

『サンタイムズ』紙の全面的な支援を受け、レイチェルは国家権力との戦いを開始します。しかし、レイチェルの記事によってCIAのスパイであることが暴露されたエリカが殺害される事件が発生。レイチェルは大きなショックを受けますが、それでも情報提供者の身元を明かすことを拒否し続けます。

レイチェルの訴えは最高裁まで争われることになります。弁護士は「表現の自由」と「メディアの役割」を強く主張しますが、国家安全保障が優先されるという判断で、レイチェルの訴えは棄却されます。1年間の収監生活を経て、夫との離婚、息子の親権剥奪という苦境に立たされます。それでもなお、情報提供者を明かそうとしないレイチェルに対し、判事は収監に意味がないとして釈放を決定します。しかし、FBI特別検察官デュボアは、釈放直後のレイチェルを改めて逮捕します。

デュボアは、真実を明かせば刑期を短縮すると提案しますが、レイチェルは頑なに拒否します。しかし、最終的に情報提供者に関する取引に応じることになります。2年の実刑判決を受け、刑務所へ向かうバスの中で、レイチェルは初めてエリカがCIAスパイだったことを知ることになります。それは、息子の同級生であるエリカの娘との何気ない会話から明らかになった事実でした。つまり、情報提供者とはエリカの幼い娘だったのです。

本作は、製作会社のヤーリ・フィルム・グループの破産により、米国ではプレミア上映のみで劇場公開されませんでした。その後、いくつかの国で公開されましたが、宣伝不足により興行成績は振るいませんでした。しかし、プレミア上映時の批評は概ね好評だったため、大変不運な作品と言えるでしょう。日本では劇場未公開でしたが、2012年にDVDが発売されています。ケイト・ベッキンセイル、マット・ディロンといったハリウッドスターの演技にも注目です。

この映画は、ジャーナリズムの倫理、国家権力との対立、そして個人の信念の大切さを問いかける、考えさせられる作品です。情報公開と国家安全保障のバランス、メディアの役割について、改めて深く考えさせられるでしょう。

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