ザ・コミッシュ

ザ・コミッシュ



「ザ・コミッシュ」(原題:The Commish)は、1991年から1996年にわたりアメリカの三大ネットワークの一つ、ABCで放映された刑事ドラマシリーズです。企画は、『特攻野郎Aチーム』などで知られるベテランプロデューサー、スティーブン・J・キャネルが手掛けました。カナダとアメリカの共同製作番組として、アメリカでは全5シーズン、合計94エピソードが制作されました。日本ではWOWOWが買い付け、1992年から日本語版が放送されましたが、こちらは第1シーズンのみの放映に留まりました。

概要と特色



物語の舞台は、犯罪と人種問題が複雑に絡み合うニューヨーク州北部の架空の都市、イーストトン。主人公である警察署長(コミッショナー)のトニー・スカリーが、個性豊かな部下たちと共に様々な事件に立ち向かう姿を描いています。このドラマの大きな特色は、単なるシリアスな犯罪捜査にとどまらない点にあります。アメリカ社会が抱える深刻な問題や人種問題にも切り込みつつ、登場人物たちの人間味あふれる描写やユーモラスなやり取りが随所に織り込まれています。また、主人公トニーの家庭生活にも焦点が当てられており、彼の家族との温かい交流が物語に深みを与えています。こうした要素が組み合わさることで、本作は従来のシリアス一辺倒なハードボイルド刑事ドラマとは一線を画す、心温まる人情ドラマとしての魅力も持ち合わせています。

主演を務めたのは、後に『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』のザ・シング役などで知られるマイケル・チクリスです。彼はこのドラマで主人公トニー・スカリーを演じたことで、俳優としての確固たる地位を築いたと言われています。

制作背景



意外なことに、ニューヨーク州が舞台でありながら、主な撮影はカナダのバンクーバーで行われました。企画当初はCBSでの放送が予定されていましたが、キャスティングに関する意見の相違から交渉が決裂し、最終的にABCで放送されることになったという経緯があります。

主要登場人物



トニー・スカリーマイケル・チクリス(日本語吹替:屋良有作)
本作の主人公でイーストン警察署長。見た目は冴えない中年ですが、優れたリーダーシップを持ち、部下や家族から深く信頼され愛されるベテラン刑事です。
レイチェル・スカリー:テレサ・サルダナ(日本語吹替:達依久子
トニーの妻。夫を陰ながら支える、良き妻であり良き母親として描かれています。
デヴィッド・スカリー:カジエリック・エリクソン(日本語吹替:種田文子
トニーとレイチェルの一人息子。
アーニー・メッツガー:デヴィッド・ペイマー(日本語吹替:小室正幸
レイチェルの兄で、スカリー家に居候しています。挙動不審な言動と根暗で一風変わった性格から、トニーとは反りが合いません。

その他、スタン・ケリー(ジェフリー・ナフス)、ポーリー・ペンタンジェリ(ジョン・ケイガン)、ペニー・ロペス巡査(ジェイソン・スコンビン)、エンリコ・カルーソ巡査(ニコラス・リー)、カルメラ・ペイガン(ジーナ・ベランテ)、秘書ルシール(キンバリー・スコット)、シド・マディソン(メリンダ・マックグロウ)、アレックス・ビービー(リチャード・カインド)など、個性豊かなレギュラー・準レギュラーキャストが登場しました。

ゲスト出演者



全94エピソードの中には、数多くの著名な俳優たちがゲスト出演しています。『刑事コジャック』で知られるテリー・サバラスをはじめ、ディーン・ストックウェルマリア・ベロ、アカデミー賞俳優ハイン・S・ニョールロッド・スタイガーなどが名を連ねています。

日本での放送



日本では、ケーブルテレビ局であるWOWOWが独占放送権を取得し、1992年から第1シーズンを日本語吹替版で放送しました。日本語版の制作は東北新社が行い、翻訳は木原たけし、演出は伊達康将が手掛けました。配給はソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが担当しました。WOWOWでは、第1シーズンの各エピソードに独自の日本語タイトルを付けて放映されました。

評価とノミネート



本作はいくつかの賞にノミネートされています。1994年には、主人公の妻レイチェルを演じたテレサ・サルダナが、ゴールデングローブ賞のテレビドラマ・ミニシリーズ部門で助演女優賞にノミネートされました。同じ年には、エミー賞の音響編集部門でもノミネートを受けています。さらに、放映されたエピソードの一つが、ミステリー界で権威のあるエドガー・アラン・ポー賞にもノミネートされました。残念ながら、いずれのノミネートも受賞には至りませんでした。

DVDリリース



本国アメリカではDVDがリリースされており、第1シーズンが2010年3月、第2シーズンが同年9月に発売されました。シリーズ全エピソードを収録した「コンプリートDVD-BOX」も2010年に発売されています。しかし、日本国内では現在までDVDの正規リリースは行われていません。

制作スタッフ



製作総指揮・企画:スティーブン・J・キャネル、スティーブン・クロニッシュ
音楽:ウォルター・マーフィー
テーマ音楽:マイク・ポスト
制作:ABC、スティーブン・J・キャネル・プロダクション、スリー・パット・プロダクション

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