ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムー

『ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムー』（The Dark Side of the Moo）は、イギリスのロックバンド、ピンク・フロイドの海賊盤アルバムです。1986年に「リチャード」という名で知られる海賊盤業者によって制作・発売されました。レコードレーベルにおけるアーティスト名義は、ピンク・フロイドが初期に使用していた「スクリーミング・アブダブス」（The Screaming Abdabs）となっています。

制作の背景

この海賊盤は、シングルのB面曲や、アメリカで発売されたアルバムに未収録の楽曲を中心に構成されています。当時、アメリカではレコード会社の判断で、オリジナルのアルバムから一部の楽曲が割愛されることがありました。「リチャード」は、そのような編集によって未発表の楽曲が多く存在している状況に不満を抱き、本作の制作に至ったとされています。

アルバムタイトルは、ピンク・フロイドが1973年に発表した傑作アルバム『狂気』（原題: The Dark Side of the Moon）のパロディであり、カバー写真には、1970年発売のアルバム『原子心母』（原題: Atom Heart Mother）を想起させる牛をモチーフにした写真が使用されています。この遊び心のあるパロディは、ファンにとって興味深い要素となっています。

評価

音楽評論家のリッチー・アンターバーガーは、AllMusicに寄稿したレビューで、ピンク・フロイドの作品をコンプリートしようとするファンに向けて、「作品の収集のためにもう50ドルを払う気がないのなら、（もし手に入るなら）このアルバムを買うことは間違いなく理にかなっている」と述べています。これは、熱心なファンにとっては見逃せないアイテムであることを示唆しています。本作は15,000枚を売り上げたとされ、その高音質についても評価されています。

Far Outのタイラー・ゴルセンは、本作を「史上最も重要な海賊盤」の一つとして挙げています。これは、単なる海賊盤としてだけでなく、音楽史における重要な作品として評価されていることを意味します。

収録曲について (詳細な曲目リストは省略)

本作には、正規アルバムには収録されていない貴重な音源が多数含まれています。シングルのB面曲、未発表テイク、ライブ音源など、ファンにとっては垂涎の的となる内容です。これらの楽曲は、ピンク・フロイドの音楽性をより深く理解するための重要な手がかりとなります。

まとめ

『ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムー』は、単なる海賊盤という枠を超え、ピンク・フロイドの音楽に対する愛情と、レコード会社へのアンチテーゼが込められた作品と言えるでしょう。その音楽的な価値だけでなく、文化的、歴史的な意義も持ち合わせており、ピンク・フロイドのファンであればぜひとも押さえておきたい一枚です。

参考文献

Kernfeld, Barry (2011). Pop Song Piracy: Disobedient Music Distribution since 1929. University of Chicago Press. ISBN 9780226431833

外部リンク

The Dark Side Of The Moo - Genius

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