ザ・ネバーズ

HBO製作のSFドラマシリーズ『ザ・ネバーズ』(The Nevers)は、ヴィクトリア朝末期の華やかながらも厳格な19世紀末ロンドンを舞台にした作品です。この物語の中心となるのは、ある謎の現象を境に突如として超常的な能力を宿すことになった人々、中でも特に多くの女性たちである「タッチト」と呼ばれる存在です。社会から奇異の目で見られ、時には脅威として扱われる彼女たちが、それぞれの能力と共に困難な時代を生き抜こうとする姿を描いています。

物語の根幹には、遠い未来で起きた出来事が関わっています。荒廃した未来の地球で、人類はエイリアン「ガランティ」と戦い、最終的にはこれを滅ぼしますが、その過程で内部分裂を起こします。絶望の淵にあった一人の兵士、ゼファー・アレクシス・ナヴィーンの意識は、最後のガランティの力を借りて時間を遡り、1896年のロンドンで自殺を図った女性、アマリア・トルーの身体に宿ることになります。この未来からの介入が引き金となり、世界中に特殊な能力を持つ「タッチト」が現れ始めたとされています。

舞台はそれから3年後の1899年。未来の意識を持つアマリア（現在はアマリア・トルーとして生きる）は、電気の流れを見ることができ、天才的な発明の才を持つ親友のタッチト、ペナンス・アデアと共に活動しています。二人は、社会から迫害され、孤立するタッチトたちを保護し、彼らが安全に暮らせる場所として「救護院」を運営しています。しかし、タッチトを取り巻く環境は厳しく、政府は彼らを潜在的な脅威と見なし、社会全体にもタッチトへの偏見と恐怖が広がっています。さらに、正体不明の勢力がタッチトを連続して標的とする事件が発生し、また、凶悪な連続殺人犯として知られるタッチト、マラディが暗躍するなど、危険が満ち溢れています。アマリアは救護院の運営とタッチトたちの保護に奔走する傍ら、自らのルーツであり、タッチト出現の原因となった未来の存在、ガランティの痕跡を探し求めます。

登場人物には、主人公のアマリア・トルー（声：坂本真綾）、その盟友である発明家ペナンス・アデア（声：早見沙織）といったタッチトの主要メンバーに加え、救護院の後援者である富豪の女性ラヴィニア・ビドロー、その弟で鳥に乗り移る能力を持つオーガスタス・ビドロー（声：小西克幸）、快楽主義者の富豪ヒューゴ・スワン（声：諏訪部順一）、タッチトに敵対する元軍人の貴族ギルバート・マッセン卿、火球を操るアニー・カービー、そして悪名高い連続殺人犯マラディ（声：朴璐美）など、様々な能力や立場を持つキャラクターが登場し、物語に深みを与えています。彼らの個性や能力が、ヴィクトリア朝社会の階級、偏見、そして超常的な要素と複雑に絡み合い、ドラマを織り成します。

本シリーズは当初、全12話の構成で企画されましたが、制作上の困難に見舞われました。原案者であるジョス・ウェドンが途中でプロジェクトを離脱したことも影響し、撮影遅延などが相次ぎました。その結果、全12話が一度に放送・配信されることはなく、まず前半の6話が2021年4月11日より放送されました。後半の6話は2022年に続いて放送される予定でしたが、制作の遅れを取り戻すことができず、2022年12月12日にシリーズの正式な打ち切りが発表されました。これにより、物語は途中で終了し、未完の作品となりました。

日本では、U-NEXTが本シリーズの独占配信サービスを提供しており、視聴することが可能です。

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